( 2 )仮払超過

今回は、消費税を預かる売上高(課税売上高)によって発生した消費税等の額(仮受消費税等)よりも、消費税の支払いを伴う資産の取得や費用の発生(課税仕入れ)によって発生した消費税等の額(仮払消費税等)が大きい事例です。

通常の消費税の申告(一般課税)であれば還付となりますが、簡易課税制度による申告では還付とはならず納付となります。

そして、前回同様、税込経理方式でも税抜経理方式でも損益計算書上の利益の額は一致することを確認します。

数値と税額

数値

輸出売上高 10,000
課税売上高(税抜) 2,000
売上高(税込) 2,160
売上原価(税抜) 3,500
売上原価(税込) 3,780
給料 4,000

消費税を預かる売上高(課税売上高)によって発生した消費税等の額(仮受消費税等)の額は160、消費税の支払いを伴う資産の取得や費用の発生(課税仕入れ)によって発生した消費税等の額(仮払消費税等)の額は280です。給料支払いは消費税が課される取引(課税取引)ではありません(いわゆる不課税取引)。

いっぽう、輸出売上は消費税が課される課税取引ではありますが(この点でいわゆる不課税取引ではありません)、消費税が免除されている取引です(免税取引)。税率が0%課せられるイメージです。

一般課税による消費税額

  • 課税売上による消費税等・・・160
  • 課税仕入れによる消費税等・・・280
  • 差引・・・120(還付)

簡易課税による消費税額

  • 課税売上による消費税等・・・160
  • みなし仕入率(50%)による消費税等・・・80
  • 差引・・・80(納税)

通常の一般課税であれば、課税売上に係る消費税等(160)から差し引く消費税等の額(仕入税額控除の額、280)のほうが大きいため、還付(120)となります。

しかし、簡易課税制度によって、課税売上に係る消費税等(160)から差し引く消費税等の額(仕入税額控除の額)はみなし仕入率による額(80)とみなされるために、還付どころか納付80となってしまいます。

組み合わせ一覧

( 1 )一般課税 & 税込経理方式

数値

輸出売上高 10,000
売上高(税込) 2,160
売上原価(税込) 3,780
給料 4,000

一般課税による消費税額

  • 課税売上による消費税等・・・160
  • 課税仕入れによる消費税等・・・280
  • 差引・・・120(還付)

税込経理方式による仕訳

(借) 売掛金 10,000 (貸) 売上高 10,000
(借) 売掛金 2,160 (貸) 売上高 2,160
(借) 売上原価 3,780 (貸) 未払金 3,780
(借) 給料 4,000 (貸) 未払金 4,000
(借) 未収消費税等 120 (貸) 雑収入 120

税込経理方式による損益計算書

売上高 12,160
売上原価 3,780
給料 4,000
雑収入 120
利益 4,500

税込経理方式は、取引を税込金額で経理して消費税等の額を損益に含める経理方式です。仮受消費税等の額は売上高等の収益を構成し、仮払消費税等の額は費用を構成し、申告による納税額も費用となりますが、還付額は収益(雑収入)となります。

( 2 )一般課税 & 税抜経理方式

数値

輸出売上高 10,000
課税売上高(税抜) 2,000
売上原価(税抜) 3,500
給料 4,000

一般課税による消費税額

  • 課税売上による消費税等・・・160
  • 課税仕入れによる消費税等・・・280
  • 差引・・・120(還付)

税抜経理方式による仕訳

(借) 売掛金 10,000 (貸) 売上高 10,000
(借) 売掛金 2,160 (貸) 売上高 2,000
仮受消費税等 160
(借) 売上原価 3,500 (貸) 未払金 3,780
仮払消費税等 280
(借) 給料 4,000 (貸) 未払金 4,000
(借) 仮受消費税等 160 (貸) 仮払消費税等 280
未収消費税等 120

税抜経理方式による損益計算書

売上高 12,000
売上原価 3,500
給料 4,000
利益 4,500

税抜経理方式は、取引を税抜金額で経理して消費税等の額を損益に含めない経理方式です。期中は仮受消費税等の額は負債科目(仮受消費税等a⁄c )、仮払消費税等の額は資産科目(仮払消費税等a⁄c )として処理され、期末の決算整理で相殺されます。本事例では還付となるので、未収消費税等a⁄c を用います。

( 3 )簡易課税 & 税込経理方式

数値

輸出売上高 10,000
売上高(税込) 2,160
売上原価(税込) 3,780
給料 4,000

簡易課税による消費税額

  • 課税売上による消費税等・・・160
  • みなし仕入率(50%)による消費税等・・・80
  • 差引・・・80(納税)

税込経理方式による仕訳

(借) 売掛金 10,000 (貸) 売上高 10,000
(借) 売掛金 2,160 (貸) 売上高 2,160
(借) 売上原価 3,780 (貸) 未払金 3,780
(借) 給料 4,000 (貸) 未払金 4,000
(借) 租税公課 80 (貸) 未払消費税等 80

税込経理方式による損益計算書

売上高 12,160
売上原価 3,780
給料 4,000
租税公課 80
利益 4,220

( 4 )簡易課税 & 税抜経理方式

数値

輸出売上高 10,000
課税売上高(税抜) 2,000
売上原価(税抜) 3,500
給料 4,000

簡易課税による消費税額

  • 課税売上による消費税等・・・160
  • みなし仕入率(50%)による消費税等・・・80
  • 差引・・・80(納税)

税抜経理方式による仕訳

(借) 売掛金 10,000 (貸) 売上高 10,000
(借) 売掛金 2,160 (貸) 売上高 2,000
仮受消費税等 160
(借) 売上原価 3,500 (貸) 未払金 3,780
仮払消費税等 280
(借) 給料 4,000 (貸) 未払金 4,000
(借) 仮受消費税等 160 (貸) 仮払消費税等 280
雑損失 200 未払消費税等 80

税抜経理方式による損益計算書

売上高 12,000
売上原価 3,500
給料 4,000
雑損失 200
利益 4,220

税抜経理方式は、決算整理で仮受消費税等a⁄c の残高と仮払消費税等a⁄c の残高を相殺して各勘定残高をゼロにします。仮受消費税等a⁄c の残高(160)よりも仮払消費税等a⁄c の残高(280)のほうが大きくなっています。一般課税であれば120還付を受けることができました。 ところが、簡易課税制度によるみなし仕入率による課税仕入れの額(80)のほうが実際の課税仕入れの額(280)よりも200小さいため、簡易課税制度によると逆に80の納付となっています。 結果として、この差額(200)は費用(雑損失)として処理します。

まとめ

税込経理方式でも税抜経理方式でも、いずれも損益計算書の利益の額は、一般課税による場合は4,500、簡易課税による場合は4,220となっていることをご確認ください。

( つづく )