( 2 )課税標準額に対する消費税額の計算の特例と帳簿入力

課税標準額に対する消費税額の計算の特例とは、消費税の申告において、課税売上により預かった消費税額を、税込の課税売上高を基礎として算出するのではなく、実際に相手方から預かった消費税額で申告できるものです。

消費税の会計処理について税抜経理方式を採っている場合には、実際の取引額(本体価格としての売上高と消費税の額)を帳簿上の金額が一致させることが望ましいと考えられます。

会計ソフトの消費税設定で消費税を自動計算することなく、一定期間の取引の合計額を直接入力するのが効率的です。

課税標準額に対する消費税額の計算の特例

課税標準額に対する消費税額の計算の特例とは、消費税の申告において、課税売上により預かった消費税額を、税込の課税売上高を基礎として算出するのではなく、実際に相手方から預かった消費税額で申告できる経過措置です。

一般的な消費税の申告における消費税額

消費税の課税標準額、すなわち、事業年度中に相手方から預かった消費税額は次のように計算します。

課税標準額 = 消費税課税売上高(税込額) × 100/108

税込の消費税課税売上高とは、消費税の経理処理を税込経理方式にしているときは売上高などの額であり、税抜経理方式にしている場合には、売上高等の額に仮受消費税の額を加算した合計額です。

ところで、この額は、基本的には税抜経理をしている場合の売上高(税抜の本体価格)と一致しますが、一致しないこともあります。なぜなら、帳簿上の残高は、多数の仕訳を計上した累計額であるため、個々の仕訳で消費税の端数処理に違いがあると一致しませんし、端数処理を一致させているとしても、個々の仕訳で個々に算定された消費税相当額と、合計金額に8/108を乗じた額とは異なりうるからです。

そして、結果的に課税標準額に8%を乗じた額が、顧客から預かったとして申告する消費税額となります。実際の計算は、まず6.3%の(国税としての)消費税額を計算し、これに17/63を乗じた地方消費税額の合8%となります。もちろん、この額から支払った消費税を差し引いた額を納税することになります(一般課税の場合で簡易課税は異なります)。

課税標準額に対する消費税額の計算に関する特例

「対価の額(本体価格)と消費税額とを区分して領収すること」「消費税額の端数処理は1円未満ですること」の要件を満たしている場合には、実際に預かった消費税額をもって申告することができます。

これは、顧客との間の個々の売上で消費税を計算する際に1円未満の端数処理を切り捨てにしているとき、大きな差が生じる可能性があります。

特例による消費税の申告

たとえば、本体価格124円の商品を販売する際に相手方から預かる消費税は、124円 × 8%= 9.92円となりますが、1円未満の端数を切り捨てて9円とし、税込133円を受領するとします。そして、領収証の記載は「124円、消費税9円、計133円」または「133円、うち消費税9円」とします。

この商品を1,000個バラバラに売り上げた場合、相手方から受領した金額の合計額は133,000円でこのうち消費税は9,000円になります。

ここで、通常の消費税の申告(一般課税)で納税する税額を確かめてみましょう。なお、便宜上、支払った消費税はないものとします(仕入税額控除はゼロ)。

  • まず、課税標準額は課税標準額は123,000円となります。
    (税込売上高133,000円 × 100/108 = 123,148.15の1,000円未満切捨て)
  • 次に、(国税としての)消費税の額を計算すると7,700円となります。
    (課税標準額123,000円 × 6.3 % = 7,749の100円未満切捨て)
  • さらに、地方消費税の額を計算すると、2,000円となります。
    ((国税としての)消費税の額7,700円 × 17/63 = 2,077.78の100円未満切捨て)
  • この結果、納める消費税の額は、9,700円となります。
    (=(国税としての)消費税の額7,700円 + 地方消費税の額2,000円)

この結果、納める消費税の額は、9,700円となりますが、実際に預かった消費税の額は9,000円です。相手方に負担をさせまいとして1円未満の端数を切り捨てて消費税を預かったのに、国に申告する額はそれを上回るという極めて理不尽なことになります

取引数が多ければ多いほど損をしかねないことになり、しかも、消費税率が5%から8%に上昇したために、消費税の計算上1円未満の端数が以前より生じやすくなっています

そこで「課税標準額に対する消費税額の計算の特例」を適用して申告することになります。

  • まず、課税標準額は課税標準額は124,000円となります。
    (税込価格の合計額133,000円 − 領収証等に明示した消費税額の累計額9,000円 = 124,000円)
  • 次に、(国税としての)消費税の額を計算すると7,000円となります。
    (領収証等に明示した消費税額の累計額9,000円 × 6.3/8 = 7,087の100円未満切捨て)
  • さらに、地方消費税の額を計算すると、1,800円となります。
    ((国税としての)消費税の額7,000円 × 17/63 = 1,888.88の100円未満切捨て)
  • この結果、納める消費税の額は、8,800円となります。
    (= (国税としての)消費税の額7,000円 + 地方消費税の額1,800円)

特例を適用した結果、納める消費税の額は8,800円となり、実際に預かった消費税の額は9,000円です。 預かった消費税よりも納める消費税が少ないことになりますが、この原因は、消費税の申告レベルでの端数調整(100円未満切り捨て)によるものです。なお、この差額は、事業者の利益となります。

会計上の処理と実際の取引額とのズレ

特例の適用により、対外的(対顧客等と対税務当局)なバランスはとれたことになります。さて、ここからは対内的(帳簿上)の問題です。

つまり、消費税の会計処理で税抜経理方式を採用している場合に、対外的な売上高と仮受消費税の額と、帳簿上の売上高と仮受消費税の額とにズレが生じうることです。

税抜経理方式を採用している場合で、会計ソフトでの売上高a⁄c の消費税の設定を、取引区分を課税、消費税入力区分を内税入力、1円未満の端数処理を四捨五入とします。ここで、上記の数値で検討してみましょう。

売上高として税込133円を入力すると、消費税相当額は10円( = 133 × 8/108 = 9.852の1円未満四捨五入)と自動的に計算され、売上高a⁄c に123、仮受消費税a⁄c に10と処理されます。この処理が1,000回あると、帳簿上は、売上高123,000、仮受消費税10,000となります。

しかし、実際に相手方と取引した金額の合計は、売上高124,000円、消費税額9,000円です。このため、帳簿上の売上高が実際に相手方との取引額より少なく計上されていることになります。この部分は仮受消費税a⁄c に含まれ、決算時の仮払消費税a⁄c と申告による納付額との差額となり、営業外収益として処理されることになります。

つまり、相手方との間では売上高(営業収益)である額が、営業外収益となってしまうのです。

帳簿上の売上高と一致させる

ところで、この特例の適用を受けるメリットがあるのは、とくに大量の取引により消費税の端数処理の差が大きくなる事業者です。

会計仕訳は、個々の取引のたびにそれぞれ別個の仕訳処理をしなければならないことはありません。とすると、一定期間の取引の合計額をひとつの仕訳として入力することが一般的です。その仕訳の元資料は、実際に相手方との間で収受した本体価格と消費税等の額が個々の取引までブレイクダウンできることになります。

税抜経理方式を採用している場合は、本体価格(の合計額)と消費税の額(の合計額)が、元資料の額とピタリと一致することが望ましいことになります。

そのためには、会計ソフト上で自動計算する消費税の端数処理と、実際に顧客から預かる消費税額の計算の際の端数処理の方法と一致させればよいことになります。しかし、端数処理の方法を同一にしたとしても、個々の取引をすべて入力した額と、一定期間の取引を合計して入力した額には差額が生じます。

それならば、会計ソフトの消費税の設定では、消費税を自動計算させずに別記入力に設定したほうがよいことになります。

( つづく )