( 6 )勘定科目の振替仕訳における消費税自動計上ミスの事例と対応

いったんある勘定科目に仕訳したものを、それから別の勘定科目に振り替えたり、同じ勘定科目でも、別の補助科目やそれぞれの管理部門ごとに振り替える仕訳を切ることもあろうかと思います。

このような勘定科目の振替仕訳においては、仕訳入力の際には各勘定科目の消費税の取引区分を「対象外」(課税対象外)として処理すべきです。

また、見積り金額の概算計上や仮計上などを行う場合にも、各勘定科目の消費税の取引区分を「対象外」(課税対象外)として処理すべきです。さらに、そもそもこれらの仕訳を入力するための勘定科目や補助科目を新設しその科目の消費税の設定で取引区分を「対象外」とする方法がベターです。

勘定科目の振替と消費税の自動計上

いったんある勘定科目に仕訳したものを、それから別の勘定科目に振り替えたり、同じ勘定科目でも、別の補助科目やそれぞれの管理部門ごとに振り替える仕訳を切ることもあろうかと思います。

このとき、会計ソフト上で勘定科目が消費税が自動仕訳される設定となっているとさまざまな問題を引き起こします。

では、以下の事例ごとに検討してみましょう。

事例目次

( 1 )振替元と振替先の科目の両方で消費税が自動計上される場合

例えば、雑費a⁄c として処理していた仕訳について、これを消耗品費a⁄c にするための振替仕訳を行うとします。

会計ソフトでの雑費a⁄c と消耗品費a⁄c の消費税の設定は、いずれも取引区分が「課税」、計算区分(入力区分)が「内税入力」だとします。

オリジナルの仕訳は次のとおりだったとします。

(借) 雑費「課税」 10,000 (貸) 現金 10,800
仮払消費税 800

税抜経理方式のため、雑費a⁄c に計上されている金額は、本体価格の10,000ということになります。そして、消耗品費a⁄c に振り替えるべき金額は、当然ですが10,000です。

そこで、次のような振替仕訳をします。

(借) 消耗品費「課税」 9,259 (貸) 雑費「課税」 9,259
仮払消費税 741 仮払消費税 741

いったい何がまずいのでしょう。

修正金額である10,000を入力したつもりなのに、会計ソフトの勘定科目の消費税設定が、雑費a⁄c も消耗品費a⁄c もともに消費税の計算区分(入力区分)を「内税入力」となっているために、振り替えたい額10,000を入力すると、ソフト側で「税込金額10,000」に対して「本体価格相当額9,259と仮払消費税相当額741」に自動区分してしまったのです。

このため、雑費10,000(借方)を振り替えたいのに、9,259(貸方)しか振り替えられていないことになります。 この結果、雑費a⁄c には741の振り替えモレによる「残高」があります。

あるべき仕訳

振替(訂正)仕訳は、元帳記載の額(税抜)で行い、仕訳では消費税は一切かかわらせない「対象外」とすべきです。

(借) 消耗品費「対象外」 10,000 (貸) 雑費「対象外」 10,000

( 2 )元帳の計上額(税抜)を税込額にして仕訳をする場合

会計ソフト上、消費税の計算区分(入力区分)が内税入力になっている勘定科目では、金額を入力すると自動的に本体価格と消費税に自動区分されるため、振替仕訳を入力するためには税込金額を入力してうまくいくことになります。

そこで、会計ソフトの内税入力を見越して、振り替えしたい金額10,000に消費税相当額を上乗せした10,800で仕訳を切ればよいことになります。

(借) 消耗品費「課税」 10,000 (貸) 雑費「課税」 10,000
仮払消費税 800 仮払消費税 800

上記の振替仕訳は、振り替えたい金額(10,000)に、わざわざ消費税を加えることによって振り替え(10,800)ました。

しかし、振替仕訳や修正仕訳を切るのに、いちいち振り替えたい金額に電卓等で消費税相当額を加算した税込金額に変換するのはミスが生じやすいです。

ミスは、単純に電卓等での数字の打ち間違いではありません。少なくとも上記の例ではうまくいったその理由は、端数が出なかったからです。会計ソフトで消費税を自動仕訳する場合、さらに端数処理の設定があります。この端数処理の設定と、入力のときに用いる(仮想)税込金額にズレがあると、1などの振り替えモレや振り替え過剰ということも起こりえます。

端数は別のところでも生じます。振替仕訳は借方と貸方の勘定科目の数が同じであるとは限りません。むしろ、振替仕訳という性格上、借方と貸方の勘定科目の数が異なるほうが通常かもしれません。このように複数の勘定科目に振り替えるような仕訳でも端数が生じることがあります。本体価格ベースでの端数調整で悩むならまだしも、入力のために税込金額に変換しているときに端数で悩むというのはまさに時間と労力の浪費といえるでしょう。

あるべき仕訳

振替(訂正)仕訳は、元帳記載の額(税抜)で行い、仕訳では消費税は一切かかわらせない「対象外」とすべきです。

(借) 消耗品費「対象外」 10,000 (貸) 雑費「対象外」 10,000

( 3 )振替先の科目が「不課税」または「対象外」である場合

さらに、振替先の勘定科目の消費税の取引区分の設定が「課税」でない場合には、税込金額で振り替えられてしまうというより深刻な事態となります。

たとえば、雑費a⁄c の10,000を保険料a⁄c に振り替えようとします。保険料a⁄c の標準の消費税の取引区分は通常の場合は「不課税」であることが多いです。

このときに、雑費a⁄c からの振り替えを、会計ソフトの「内税入力」に対応するため10,000ではなく、税込金額相当額である10,800で入力するとします。

(借) 保険料「不課税」 10,800 (貸) 雑費「課税」 10,000
仮払消費税 800

すると、雑費a⁄c から保険料a⁄c へ10,000振り替えたいのに、保険料a⁄c には10,800が振り替わっています。

問題はこればかりではありません。

この振替仕訳では、雑費a⁄c が貸方で10,000減少するばかりでなく、仮払消費税a⁄c でも800が減少しているのです。このままでは、消費税の申告において、本来差し引ける仮払消費税が過小ということになりかねません。つまり、消費税を過大に申告・納付してしまうのです。

しかも、このミスは、消費税申告に先立って行う消費税取引の金額と消費税勘定との照合による検証作業でも、自動仕訳によって生じたミスなので検証作業で埋没してしまうのです。

振替仕訳の入力金額をわざわざ税込金額に変換していると、振替仕訳自体の修正仕訳があった場合には、さらにややこしいことになってしまいます。

あるべき仕訳

振替(訂正)仕訳は、元帳記載の額(税抜)で行い、仕訳では消費税は一切かかわらせない「対象外」とすべきです。

(借) 保険料「不課税」 10,000 (貸) 雑費「対象外」 10,000

( 4 )振替元の科目を税抜金額「対象外」としたが、振替先の科目で消費税が自動計上される場合

振替仕訳をする際に、わざわざ会計ソフトの勘定科目の設定に合わせて入力金額を変更するのは、考えてみれば本末転倒といえます。

そこで、雑費a⁄c から振り替えるとき、この仕訳のときに雑費a⁄c の消費税の取引区分を「課税(取引)」から「(消費税)対象外(取引)」として処理することにしました。

これならば、振り替えたい金額をわざわざ電卓等で税込金額相当額にしなくて済みます。しかし・・・

(借) 消耗品費「課税」 9,259 (貸) 雑費「対象外」 10,000
仮払消費税 741

確かに、雑費a⁄c の方は仕訳入力の際に消費税の取引区分を変更したために、入力金額は振り替えたい金額10,000の入力で問題ないのですが、相手科目の消耗品費a⁄c の消費税の取引区分が「課税」のために、消耗品費a⁄c に10,000振り替えるべきところが、またしても仮払消費税相当額が分離されてしまいます。

このため、消耗品費a⁄c に10,000を振り替えたいのに、9,259しか振り替えられていないことになります。つまり、消耗品費a⁄c には741の振り替え不足があります。

問題はこればかりではありません。

消耗品費a⁄c への振り替え不足の額741は仮払消費税a⁄c で処理されているため、ともすれば、消費税の申告において過大に仮払消費税を控除しかねないのです。 つまり、消費税の過少申告・納付ということになります。

しかも、このミスは、消費税申告に先立って行う消費税取引の金額と消費税勘定との照合による検証作業でも、自動仕訳によって生じたミスなので検証作業で埋没してしまうのです。

あるべき仕訳

振替(訂正)仕訳は、元帳記載の額(税抜)で行い、仕訳では消費税は一切かかわらせない「対象外」とすべきです。

(借) 消耗品費「対象外」 10,000 (貸) 雑費「対象外」 10,000

( 5 )振替先の科目を税抜金額「対象外」としたが、振替元の科目で消費税が自動計上される場合

ばかばかしいとお思いになる方も多いとは思いますが、実はけっこう侮れません。

この例とは逆のことほうがむしろ起こりやすいのです。

(月次や四半期なども含めた)決算の際にバタバタしながら勘定科目の振替仕訳を行うと、この例とは逆に、「この勘定に振り替える金額はこれだ」と借方サイドの勘定科目の金額に集中し、仕訳入力の際に、この借方サイドの部分だけ勘定科目の消費税の取引区分を「対象外」にしてしまい、貸方サイドの勘定科目の消費税取引の処理を失念してしまうのです。

たとえば、消耗品費a⁄c の10,000のうち、備品が8,000で、残り2,000は修繕費だったとします。

(借) 備品「対象外」 8,000 (貸) 消耗品費「課税」 9,259
修繕費「対象外」 2,000 仮払消費税 741

たとえば、備品a⁄c に8,000、修繕費a⁄c に2,000への振り替えに集中し、たしかに両科目の消費税の取引区分の設定が「課税」であったとしても、集中しているがゆえに仕訳入力の際には「対象外」に変更できたとします。しかし、そこまでが精いっぱいで、貸方の消耗品費a⁄c の10,000をそのまま入力して終わってしまうのです。消耗品費a⁄c の消費税の取引区分が「課税」で計算区分(入力区分)が「内税入力」ですと、10,000を入力すれば、会計ソフト上は10,000は税込金額として認識されるため、入力すれば9,259しか振り替えられず、振り替えモレの741残高があることになります。

問題はこればかりではありません。

消耗品費a⁄c からの振り替えモレの741はどうなったのかというと、仮払消費税a⁄c から476が減少しているのです。 この振替仕訳では、雑費a⁄c が貸方で10,000減少するばかりでなく、このままでは、消費税の申告において、本来差し引ける仮払消費税が過少ということになりかねません。つまり、消費税を過大に申告・納付してしまうのです。

しかも、このミスは、消費税申告に先立って行う消費税取引の金額と消費税勘定との照合による検証作業でも、自動仕訳によって生じたミスなので検証作業で埋没してしまうのです。

あるべき仕訳

振替(訂正)仕訳は、元帳記載の額(税抜)で行い、仕訳では消費税は一切かかわらせない「対象外」とすべきです。

(借) 備品「不課税」 8,000 (貸) 消耗品費「対象外」
10,000
修繕費「不課税」 2,000

これに関連する消費税取引の仕訳のアドバイス

決算処理の過程で、「あれ?完璧に振替仕訳を切ったはずなのに、なんで残高が残るんだろう(残高がマイナスになっているんだろう)」ということがあった場合には、今回のミスを疑いましょう。

振替仕訳ばかりでなく、「見積り金額の計上」(「概算計上」や「仮計上」など)の場合にも、仕訳入力の際には消費税を一切関係させないほうがよいと思われます。

なお、「見積り金額の計上」(「概算計上」や「仮計上」など)が定型化している場合には、リアルな取引とは分けるために別個の補助科目などを新設し、その補助科目の消費税の取引区分の設定を「(消費税)対象外」とするとよいでしょう。仕訳ミスも防止できますし、見積り金額の計上やその戻し入れ(取り消し)も帳簿上より簡単に把握することができます。

( おわり )