( 1 )その基本戦略

まったく時間がないのに手つかずの状態、あるいは、現状の帳簿にまったくといっていいほど信頼性が持てずに最初っからやり直さなければならないときは、お行儀のよい教科書的な方法は採りえません。

そのためには、まずは預金等の資金取引を入力し、これに発生主義的な要素を加えていくイメージで帳簿を作成します。

加えて、会計ソフトに入力した仕訳について、修正仕訳を入れるのではなく直接修正することによってより妥当な仕訳に変更していきます。修正仕訳でこねくり回すのではなく、直接修正による検証可能性やわかりやすさを重視します。

速攻で帳簿を作るための基本戦略

手つかずの状態、あるいは、現状の帳簿にまったくといっていいほど信頼性が持てずに最初っからやり直すときはどうすればいいでしょうか。

私の場合は、おおむね次のように処理しています。

  • とにかく現金預金の資金勘定を入力して残高を合わせます
  • 入力した資金勘定の相手科目を中心に仕訳を変更します
  • 資金取引以外の取引を入力します
  • 資金取引と資金取引以外の取引とを関連付けます
  • 数ヶ月分の取引で仕訳を安定させ、あとは仕訳の複製で数字を入れ替えます

なぜ資金勘定を固めることから始まるのかと申しますと、何もかも信頼性が疑わしい場合には、客観的に信頼のおける資料は預金口座の取引だけになるからです。

会計帳簿の基本はやはり資金の動きであり、ここを「幹」としてしっかりと固め、これに会計理論的な「枝葉」を付けていくほうが地に足が付いているからです。

「数ヶ月分の取引で仕訳を安定させる」という意味は、たしかにひと月分の仕訳を入力すれば翌月以降はどんどん仕訳を複製して数値を変えればいいのですが、数ヶ月入力しないと取引の全体像がわからず仕訳が安定しないからです。入力情報が増えるにつれどんどん科目(勘定科目のみならず補助科目)も増えていくからです。もちろん、仕訳は直接変更できるのではれば、入力済みの仕訳をどんどん変更すべきです。

会計ソフトの選定

まず、会計ソフトといっても、統合業務システムのように、売掛金管理、資金管理、手形管理、未払管理などに分かれている場合には、入力の方法が変わるため、そのときはそのときなりに戦略を変更することになります。

たとえば、先に売掛金管理システムや未払管理システムに入金情報や出金情報を入力し、それが自動仕訳で財務システムに入る場合には、会計システムに直接入力すると(そもそも入力できない場合もあります。)仕訳が重複することになるからです。

次に、理想的な会計ソフトの条件としては、科目設定(勘定科目や補助科目の新設や変更)がしやすいこと、伝票の変更や複写などがしやすいことです。

だんだんビジネスがわかり、仕訳を入力していくと、「この仕訳に変えたほうがいい」「やはり補助科目が必要だ」「別の科目を使ったほうがいい」など、どんどん改善点が出てきます。

このようなとき、 1 行の仕訳(元帳形式での入力)から複数行の仕訳(振替伝票)にすぐに変更できたり、仕訳入力の途中でどんどん新しい勘定科目や補助科目を追加していけるソフトが望ましいです。

仕訳の直接修正

私の方法は、とにかく資金取引を入力することから始めます。

相手科目なんてとりあえず悩む必要はありません。悩んだら、とりあえず支払いの場合には「仮払金」を、入金の場合には「仮受金」でかまいません。

そして、後で内容がわかったら仕訳を直接修正します。

この点、たしかに修正すべき部分だけを追加的に単独の仕訳として入力したり、あるいは、オリジナル仕訳の反対仕訳を切ってから補正した仕訳を入力したりするのがお行儀がよいです。

しかし、これは「平時」の処理です。どういう処理がベターなのかすら固まっていない「戦時」では、いちいち修正仕訳など計上していたら時間がありません。

しかも、修正すべき部分だけを追加的に単独の仕訳として入力した場合、入力順の関係で、修正の元となる仕訳と元帳的に離れてしまい非常にわかりにくくなり、また、同じ修正仕訳を再び入力してしまうこともあります。

「なんのために帳簿を作るのか?」の重要な目的のひとつに検証可能性があります。お行儀にこだわり、検証そのものに余計なエネルギーを費やしては本末転倒だと思います。

オリジナルの仕訳を直接修正することをオススメします。

社内ルール等など諸般の事由で過去の仕訳を直接修正することはできなかったり、月次決算を締めてしまうと会計ソフト自体がそれを許容しないこともあります。

このような場合には、事業所が正式に利用しているソフトとは別のソフトで作り込んで、ある程度固まってきたところで移行する、いわゆるパラレルランも考え方のひとつと思われます。

いずれにせよ、「速く効率的にそれなりの帳簿を作る」ことが最大の目的なので、そこをブレることなく突っ走ることが大切です。

まずは消費税の設定

通帳どおりに入力する前に、まずは、会計ソフトで消費税の設定を行います。

国内で事業を行うすべての事業者は消費税の納税義務があります(納税義務者)。このため、事業活動で預かった消費税と支払った消費税を集計して申告と納税を行わなければなりません。

事業活動で預かった消費税と支払った消費税は、会計帳簿すなわち個々の仕訳によって集計されるため、個々の仕訳で消費税をどう経理するかが重要になります。

そこで、仕訳入力の前に、消費税の経理方式を会計ソフトで設定する必要があります。

まず、消費税の設定を行う前に、この事業年度の消費税の申告についてチェックします。

  • 当期は消費税の納税義務があるのか
  • 消費税の経理処理を税抜経理方式で行うか税込経理方式で行うか

すべての事業者は消費税の納税義務があります。ただし、基準年度(基本的に 2 年前)の売上高の額や、特定期間(基本的に前事業年度の上半期)の売上高や給料等支払額の大きさによっては、消費税の納税義務が免除されます(免税事業者)。

つまり、ルール上は、事業年度によって納税義務が生じたり生じなかったりすることになります。

一方で、事業者からルール上は免税事業者なのに、積極的に消費税の納税義務者となることもできます(課税事業者)。また、法人の場合には設立(後)の資本金の額によっては消費税の納税義務が免除されません。

いずれにしても、入力する事業年度が消費税の納税義務があるかどうか、消費税の申告を行う義務があるのかどうかを検討します。

消費税の経理方式には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらを選択するかは自由です。ただし、消費税の納税義務がない事業年度では、税込経理方式でなければなりません。

なお、税込経理方式か税抜経理方式かの選択を行ってから、当事業年度の消費税申告で簡易課税制度の適用を受ける場合には、会計ソフト上であらかじめ事業区分を設定することもできます。

( つづく )