取引からみた消費税の解説

消費税の支払いや消費税の受取りは経済取引に深く浸透していますが、型通りの解説ではなく、やや異なるアプローチでその概要を解説いたします。

( 1 )消費税を預かった後事業者はどうしているのか

私たちは、買い物やサービスを受けるときに消費税を支払っています。しかし、消費税を支払っていないものもあります。とはいえ、私たちは「これは消費税を支払っているかいないのか」といちいち考える必要はまったくありません。

しかし、私たちから消費税を預かったお店などは、その消費税を国に納めることになります。その際に「この取引は消費税を預かる取引なのか」「この取引では消費税を支払っているのか」に常に関心をもっていなければなりません。そうでないと、消費税の申告と納付を正しく行うことができないからです。

( 2 )日々の取引での消費税の把握と会計処理の重要性

消費税の申告を正しく行うためには、消費税の取引を正しく判定することが重要です。

消費税の取引は、日々の会計処理で記録することになりますが、消費税の取引の判定は正しくても、会計処理で誤ってしまい結果として消費税の申告が誤ってしまうことが少なくありません。

勘定科目名は何がよいかよりも、消費税の取引の正確な入力のほうがよっぽど重要なのです。

( 3 )消費税とは無関係な取引

「課税取引とは何か」を積極的に検討するアプローチも重要ですが、ここでは、「課税取引でない取引とは何か」を検討することによって課税取引とは何かを消極的に検討するアプローチを採ります。「不課税取引」とは、消費税が課されない取引を指しますが、消費税法にはない一般的な呼称です。私の場合は、「不課税」と「対象外」を区別します。

( 4 )政策的に消費税が課されない取引(非課税取引)

非課税取引は、消費税の課税の対象となる要件「国内」「事業者」「資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供)」をすべて満たしているものの、法律の規定よって課税の対象しないものです。これらの取引について支払った額には消費税は含まれていません。このため、消費税を支払ったものとして申告してしまうと過少に申告・納付となってしまいます。

( 5 )非課税売上と課税売上割合と消費税の申告

法律の定めにより課税の対象とはならない非課税売上高の額は、総売上高に対する課税売上高の割合(課税売上割合)に影響を及ぼします。課税売上割合が低くなると、消費税の申告で支払った消費税の全額を差し引くことができなくなります(課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上の場合を除きます。)。このため、課税売上割合の正しい算定、その前提となる非課税売上高の正しい把握は極めて重要です。

( 6 )消費税が0%課される取引(免税取引)

免税取引も、取引に関連して消費税の受取りや支払いがないので、不課税取引や非課税取引と同様ですが、課税の対象となっている点では消費税を預かる(支払う)通常の課税取引と同じで、ただ消費税の税率が0%というイメージです。免税売上高は消費税の納税義務が免除されるかどうかなどの判定や、課税売上割合の算定にも重要な影響を及ぼします。