( 1 )消費税を預かった後事業者はどうしているのか

私たちは、買い物やサービスを受けるときに消費税を支払っています。しかし、消費税を支払っていないものもあります。とはいえ、私たちは「これは消費税を支払っているかいないのか」といちいち考える必要はまったくありません。

しかし、私たちから消費税を預かったお店などは、その消費税を国に納めることになります。その際に「この取引は消費税を預かる取引なのか」「この取引では消費税を支払っているのか」に常に関心をもっていなければなりません。そうでないと、消費税の申告と納付を正しく行うことができないからです。

「消費税はいただきません」は本当か??

私たちは買い物をしたりサービスを受けると消費税を支払っています。より正確には、国の税金である消費税と地方の税金である地方消費税の合計額を支払っています。

それは、値札に「税込」と書いてあったり「本体価格」と書いてあると強く意識できますが、何にも書いていなくても実は消費税を支払っているのです。

かつては「消費税還元セール」「消費税はいただきません(消費税はサービスします)」というのをしばしば目にしまたが、実はこれらにも消費税を支払っているのです。たとえば、本体価格1,000円、消費税率8%で税込み1,080円となる商品を「消費税はいただきません」ということで1,000円で販売されていたとしても、実際には消費税を支払っているのです。つまり、1,000円というのは「純粋な1,000円」でなく「税込み1,000円」だったのです。別の見方をすれば、そのお店は消費税を受け取っているのです。

1,000円に8を乗じて108で割ると、74.074074074・・・となります。これが、税込み1,000円に含まれる消費税率8%の消費税額です。つまり、消費税抜きの本体価格は926円となります。

つまり、「消費税をいただきません」として1,000円で販売したものは、実は1,000円を926円に値引きして販売していたのです。

いっぽうで、本当に消費税を支払っていない取引もあります。

収入印紙を買うときは消費税を支払っていません。 ローンを返済するときに利息を支払いますが、この利息には消費税は含まれていません。

実は、私たちがいろいろな買い物をしたりサービスを受けておカネを支払っていても、すべての取引で消費税を支払っているとは限りません。消費税がかかる取引(「課税取引」といいます。)かそうでない取引かどうかは消費税法(とくに消費税基本通達)が定めています。

私のも含めまして安易なサイトの解説だけに頼らず、いったんオリジナル(条文)にあたり、それでもわかりずらいときにはじめて書籍等に当たるのがよいと思います。何がわからないのかがわかることは、専門家とのやりとりもより濃く、そしてポイントを突いたものとなると思われます。

私たちから消費税を受け取ってからどうするのか

さて、私たちから消費税を受け取ったお店などはどうするのでしょうか。

個人であるか法人であるかにかかわらず、事業を行う者は日本国内で消費税がかかる取引を行った場合には消費税を納税する義務があります。

消費税は税金なので受け取った消費税はすべて国に納めなければなりません。この意味では、消費税は「受け取った」というよりも、買い手から「預かった」ということになります。 そして、消費税の申告を行って消費税を国に納めます。

ところで、お店なども、仕入など事業を行うための支払いをするときに消費税を支払っていますので、消費税の申告では、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納めることになります。

さて、私たちは「今の支払いは消費税を支払っているかいないのか」といちいち考える必要はまったくありません。

しかし、私たちから消費税を預かったお店などは、その消費税を国に納めることになります。その際に「この取引は消費税を預かる取引なのか」「この取引では消費税を支払っているのか」に常に関心をもっていなければなりません。そうでないと、消費税の申告と納付を正しく行うことができないからです。

消費税の取引の種類

消費税の申告は、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことになるのですが、少しだけ詳しく申し上げると、消費税を預かった取引(課税売上高)と消費税を預からなかった取引、消費税を支払った取引(課税仕入れ)と消費税を支払わなかった取引に区分することになります。

シンプルといえばシンプルなのですが、単純に消費税を預からなかった取引にもそれぞれ種類があり、この区分によって納める消費税が大きく変わってくることがあります。

具体的に申しますと、消費税法による取引の種類は次のとおりです。

  • そもそも消費税がかからない(課税の対象とならない)もの
  • 消費税がかかる(課税の対象となる)もの
  • 消費税がかかる(課税の対象となる)が、法律の定めにより課税の対象とならないもの
  • 消費税がかかる(課税の対象となる)が、消費税を預からなくてよいもの

そもそも消費税がかからない(課税の対象とならない)ものを不課税取引、消費税がかかる(課税の対象となる)ものを課税取引、消費税がかかる(課税の対象となる)が、法律の定めにより課税の対象とならないものを非課税取引、消費税がかかる(課税の対象となる)が、消費税を預からなくてよいものを免税取引といいます。

経理的な区分「対象外」

さて、消費税の申告にあたっては、日々の取引について消費税をキチンと把握していなければなりません。このため、会計ソフトへの入力では取引を正確に区分することになります。

海外での取引

消費税法は日本国内での取引に適用されます。国外での取引について日本の消費税等が課されることはありません。この場合の国外での取引は、課税の対象とならない点では不課税取引と同じですが、そもそも日本の消費税法が適用されていないわけであり、不課税取引とは別に対象外として区分することもあります。

なお、海外で買い物をしたりサービスの提供を受けるときにも消費税は課されますが、それはその国で課される消費税であって、日本の消費税の申告とはまったく関係がありません。

経理的な勘定科目の振替

会計処理上で、勘定科目の振替や修正を行う場合には、税抜金額で行うことになります。この取引は対外的なものではなく内部的な経理上の取引であるため、対外的な取引である不課税取引とは別に対象外として区分することもあります。

( つづく )