( 4 )消費税申告のための帳簿チェックの方法

消費税申告とは、つまるところ、仮受消費税から仮払消費税を差し引いた額がプラスなら納税、マイナスなら還付というものです。

とはいえ、ノーチェックで仮払消費税a⁄c と仮受消費税a⁄c の差額をベースに作ってしまうのはあまりにリスキーです。

このため、なんらかのチェックが必要ですが、消費税というのは、ほぼすべての仕訳で考慮されるべきものですので、ただマウスをスクロールしてチェックするというのはあまりにも過酷です。

そこで、消費税申告にあたっては、勘定科目ごとに消費税取引の取引区分(課税、非課税、不課税など)別の取引合計額をシステムから出力して仮受消費税a⁄c の残高や仮払消費税a⁄c の残高と照合するチェック方法があります。

主なチェック内容

  • 「課税仕入れ」取引の集計金額に消費税率を乗じた額と仮払消費税a⁄c の残高との照合
  • 「課税売上」取引の集計金額に消費税率を乗じた額と仮受消費税a⁄c の残高との照合
  • 「課税仕入れ」以外の取引について「課税仕入れ」でないかどうかの検討
  • 「非課税売上」の検討
  • 「課税仕入れ」の内容(課税売上に要するものかそれ以外か)の検討
  •  輸入消費税の検討

そして、修正事項が出た場合には、消費税取引を修正するための仕訳を切ることになります。

設例

たとえば、各勘定科目について消費税の取引区分の集計金額が以下のとおりだとします。

課税売上 10,000
非課税売上 10
課税仕入れ 5,000
不課税 2,000
課税対象外 3,000

このとき、消費税勘定の残高が以下のとおりだとします。

仮受消費税a⁄c 800
仮払消費税a⁄c 400

「課税売上」の集計金額10,000に8%を乗じると、10,000 × 8% = 800です。仮受消費税a⁄c の残高も800ですから、おおむねOKということになります。

同じく、「課税仕入れ」の集計金額5,000に8%を乗じると、5,000 × 8% = 400です。仮払消費税a⁄c の残高も400ですから、おおむねOKということになります。

ただし、現実には、課税取引に8%を乗じた額が、消費税勘定の残高とは完全に一致することはほとんどありません。というのは、課税取引金額の集計額に8%を乗じた額と、個々の仕訳から積み上げられた仮払消費税a⁄c や仮受消費税a⁄c の残高は異なるからです。たとえ、消費税を会計システムで自動区分していたとしても、端数処理などの関係でズレが生じます。仕訳が増えれば増えるほど差は大きくなります。

ところが、実際には、取引数の多さによる端数の累積による誤差では説明できない著しく誤差が出ることがあります。これはかなり焦ります。

「課税売上」の集計額が10,000なのに、仮受消費税a⁄c 残高が600だとすると、理論値は800(= 10,000 × 8%)なのに、仮受消費税に計上された額は200少ないということになります。

課税売上の10,000が正しいのか(とすれば仮受消費税相当額は800)、それとも、仮受消費税a⁄c 残高600が正しいのか(とすれば課税売上は7,500)・・・悩むことになります。

ここで、時間切れ等の関係で消費税の申告では課税売上10,000が正しいとして申告すると、これに係る仮受消費税は800になりますから、もし正しい額が600だった場合に消費税を納めすぎということになります。逆に、仮受消費税a⁄c の残高600が正しいとして申告すると、もし本来なら課税売上10,000で仮受消費税が800だった場合に消費税納付もれということになります。

そこで、差額の原因を検証する必要があるのです。

消費税取引と消費税額の差額の検討

差額の主な要因その1・・・消費税勘定自体を直接動かした場合

例えば、期中に消費税勘定を相殺したり、消費税の中間納付額を仮払消費税a⁄c で処理したり、仮受消費税a⁄c のマイナス取引(借方取引)として処理したりすると、当然上記の方法では金額がまったく合いません。なぜなら、そもそも比較するべき課税取引がないからです。

差額の主な要因その2 ・・・消費税を自動計算させない場合に取引区分の入力をミスした場合

これは会計システムによってはまったく関係のないことなのですが、消費税の入力区分を別記入力(内税入力や外税入力により消費税相当額を自動計上せず、本体価格と消費税額を各勘定科目に直接入力する方法)する場合、本体価格を仕訳する勘定科目に消費税の取引区分(課税、非課税、不課税など)の入力を間違える(失念する)場合です。

典型的なパターンが事務所家賃です。 「会社は月末までに翌月1ヶ月分の家賃を前払するものとします。事務所の家賃なので消費税は課税仕入れとなります。

8月31日

(借) 前払費用 10,800 (貸) 現預金 10,800

9月1日

(借) 家賃「課税」 10,000 (貸) 前払費用 10,800
仮払消費税 800

家賃a⁄c について、標準の消費税の取引区分を「課税」、消費税の入力区分を「内税入力」としている場合、家賃a⁄c に10,800と入力すれば自動で仮払消費税相当額800が分離され、仮払消費税a⁄c に800が自動計上されます。家賃a⁄c の10,000は消費税の取引区分は当然に「課税仕入れ」となります。 ところが、なんらかの事情で家賃a⁄c の10,000について消費税の取引区分を何ら入力しない場合には、ソフト上は不課税や課税対象外として処理されてしまうことになります。

(借) 家賃「不課税」 10,000 (貸) 前払費用 10,800
仮払消費税 800
(借) 家賃「対象外」 10,000 (貸) 前払費用 10,800
仮払消費税 800

消費税取引を集計すると

課税仕入れ 0
仮払消費税a⁄c 800

となって、課税取引額と仮払消費税a⁄c に大きな狂いが生じるのです。

なお、家賃a⁄c について、標準の消費税の取引区分を「課税」、消費税の入力区分を「別記入力」としている場合、たしかに消費税相当額は自動計上されませんが、家賃a⁄c の標準の消費税の取引区分が「課税」であるため、10,000は消費税の取引区分じたいは「課税仕入れ」となります。ただし、勘定科目の設定で消費税の入力区分を「内税入力」または「外税入力」としている場合で、特定の仕訳だけを「別記入力」とすることはできますが、消費税の入力区分だけではなく取引区分まで変更してしまうと、狂いが生じることになります。

差額の主な要因その3 ・・・輸入消費税の場合

そもそも輸入消費税は、輸入申告書に記載されています。通常のパターンは、輸入時に通関業者が輸入申告書を代行作成し、輸入消費税と関税を立替払し、通関手数料と併せて会社に請求します。で、現物自体の請求は別途先方から送付されてきます。

典型的に異なるのは、通常取引では債務認識時点(本体請求金額と消費税額)は一致するのに、輸入の場合には、輸入消費税の支払(通関業者立替も含めて)が先行し、本体請求金額は後から送付されることがまれでないことです。このことは、本体金額の請求書とのタイミングがずれれば、本体価格と消費税額はズレが生じることになります。

まして、外貨建取引のときはなおさら厄介なものになります。輸入消費税の金額は輸入申告書記載時のレートで円換算されて決済されるのに、本体価格の請求書については、それぞれの社内ルールによって円換算されて記帳されるからです。これでは一致するはずがありません。というより、一致させようとするほうが無理があると思われます。

これに対処する場合には、次の方法によるのがよろしいかと思います。

  • 輸入消費税は通常の仮払消費税a⁄c とは別に「輸入消費税a⁄c 」によって管理する。あるいは、仮払消費税a⁄c の中に補助科目を設ける。
  • 後日、本体価格の請求書が来ても、仕訳時の消費税取引区分は便宜上「不課税」か「課税対象外」とする。

これにより、課税取引額と消費税勘定のチェックはかなり容易になることが考えられます。そして、この輸入消費税を区分して管理するということは、消費税申告にも合致するからです。なぜなら、消費税申告においては、輸入消費税は通常の消費税とは別枠で仮受消費税から控除することになっているからです。

せっかくの機会なので、輸入消費税関係の管理などについて提案させてください。

輸入申告書と本体部分の請求書はコピーして、通常の証憑のファイルとは別途管理しておきましょう。 事後チェックや税務調査の段階で、膨大な証憑ファイルをひっくりかえして探すのは、いかにナンバリングされて見つけやすいとはいっても、かなりモチベーションが下がります。

もうひとつ、輸入申告書をよく見て経理処理しましょう。輸入消費税(現行6.3%)と、輸入地方消費税(現行1.7%相当)とは合計してもかまわないと思いますが、関税も輸入消費税にまぜて処理しないようにしましょう。ケアレスミスが生じがちです。

この検証作業での盲点

このような、課税取引の集計額に8%を乗じた額と、消費税勘定の残高を比較するというチェックは、消費税の申告前のチェックとしては有効です。

ただし、この方法は、つまるところ「課税コードと消費税勘定が符合しているか」のチェックにすぎません

たとえば、「課税売上」額が10,000で仮受消費税a⁄c の残高が800の場合、「課税売上」額10,000に8%を乗じると、10,000 × 8% = 800です。仮受消費税a⁄c の残高も800ですから、おおむねOKということになります。

ここで注意しなければならないのは、「おおむねOK」の意味は、この検証だけでは「会計ソフトの消費税自動仕訳が正しい」とチェックしているにすぎない」ということです。各勘定科目について消費税の取引区分を設定し、消費税の入力区分を内税入力や外税入力にしていると、ソフトのほうで消費税相当額を自動的に分離あるいは発生させるからです。「課税仕入れ」の合計額と仮払消費税a⁄cの合計額を比較してみたところで、そのチェックだけでは「それがなにか???」で終わってしまいます。

たとえば、お祝い金10,000円を支払った場合、本来は10,000円は消費税は「不課税」となります。 ここで、交際費a⁄c について、消費税の取引区分を「課税仕入れ」、入力区分を「内税入力」と設定されているとします。交際費a⁄c に10,000円と入力し、特段の修正を行わないと、内税入力により入力金額は税込金額として処理され「交際費9,259円と仮払消費税741円」と仕訳されます。

この場合での課税仕入れの額は9,259円なのですが、これに8%を乗じると741円となるため、課税仕入れの額と仮払消費税a⁄c の額は完全に一致しているので、「消費税の処理は問題なし」と結論付けてしまうのです。

やはり、単純な「数字合わせ」だけでは片手落ちで、それぞれの取引自体の吟味が必要になります。

なお、時間内にどうしても検証作業が間に合わず、課税取引と消費税勘定の差が埋められないこともあります。

この場合には、税務保守的に、取引額と消費税勘定の額から保守的に「仮受消費税は多め」「仮払消費税は少なめ」の金額を採用するようにしています。

課税仕入れ額に消費税率を乗じた額 > 仮払消費税a⁄c の額

仮払消費税a⁄c の額を消費税率で割り返した額を基礎として申告します。

仮払消費税a⁄c の額 > 課税仕入れ額に消費税率を乗じた額

課税仕入れ額に消費税率を乗じた額(仮払消費税相当額)を加算して申告します。

課税売上額に消費税率を乗じた額>仮受消費税a⁄c の額

課税売上額に消費税率を乗じた額(仮受消費税相当額)を加算して申告します。

仮受消費税a⁄c の額>課税仕入れ額に消費税率を乗じた額

仮受消費税a⁄c の額を消費税率で割り返した額を基礎として申告します。

なお、課税標準額に対する消費税額の計算の特例によって、実際に受け取った消費税額をもって申告する場合には上記とは異なるチェックとなります

この特例の適用を受けている場合には、相手方との間での実際の取引額(本体価格と消費税の額)の累計額が忠実に会計仕訳に反映されているかどうかのチェックになります。とくに、一定期間中の取引の合計金額を税込金額で入力して消費税額を会計ソフトで自動計算させようとすると、実際の金額とにズレが生じるからです。

( つづく )