( 4 )税務上の取扱い

社会保険料に関する法人税法上の取扱い、すなわち、会社負担分となる部分が法人税法上も費用(損金)となるタイミングはいつかという点については、決算日が月末日である場合には、翌月後半に到達する納入告知書を待たずにその事業年度の損金となります。これは、会計理論上とも整合性があります。

概算(未確定額)の計上額と、実際の納入告知書の金額に違いがあった場合には、法人税申告書上の調整(申告調整)で足りますが、修正仕訳を入れることが会計上は好ましいことになります。

規定の取扱い

さて、社会保険料の法人税法上の取扱いを定めているのは法人税基本通達9-3-2です。

この法人税法上の取扱いの内容は、社会保険料が損金になるかならないかというものではなく、損金となるタイミングについてです。

法人税基本通達9-3-2(社会保険料の損金算入の時期)

  • 法人が納付する次に掲げる保険料等の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
  • (1)健康保険法第155条《保険料》又は厚生年金保険法第81条《保険料》の規定により徴収される保険料
  • (2)厚生年金保険法第138条《掛金》の規定により徴収される掛金(同条第5項《設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収》又は第6項《解散時の掛金の一括徴収》の規定により徴収される掛金を除く。)又は同法第140条《徴収金》の規定により徴収される徴収金
  • (注)同法第138条第5項又は第6項の規定により徴収される掛金については、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

この通達の趣旨は、社会保険料は、保険料や掛金の計算の対象となった月の末日にその納付義務が確定する(債務確定基準)ので、納入告知書の到達や実際の納付を待たずに損金算入することができるというものです。

いっぽうで、厚生年金保険法138条5項(設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収)または第6項(解散時の掛金の一括徴収)により、一括して徴収される掛金については、納付義務が確定した事業年度あるいは実際の納付を行ったときに損金に算入することになります。

よって、社会保険料については、以下のような処理になると思われます。

  • 月末日が決算の場合には、翌月後半となる納入告知書の到着を待たずに損金の額に算入できる
  • ただし、概算(未確定)計上した実際に到達した納入告知書との間に誤差があれば、修正を行う

通達の規定によれば、「当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」とあります。よって、決算日が月末でない場合には損金の額に算入することができません。このことについては、国税庁サイトの質疑応答事例でも明らかにされています。

ホーム>税について調べる>質疑応答事例>法人税目次一覧>社会保険料の損金算入時期について

月々の社会保険料は、従業員等が増減したり従業員等に育児休暇等が発生したり、または、いわゆる随時改定や料率の変更が行われないかぎり、定時改定で決まった額を納付することになるため、毎月同額ということも少なくありません。 この場合には、前回申し上げた概算(未確定)計上の額も、翌日に到達する納入告知書の額と一致することになります。

納入告知書と金額に差が生じた場合の対応

逆に言えば、社会保険料の増減が発生する(と想定される)月については、(月次)決算の締めの関係で、一般的には納入告知書の到達を待てない場合には、会計上は社会保険料の未確定額を算定し計上することになります。

いっぽう、税務上は、通達は費用計上(損金経理)を要求していません。 このため、納入告知書の到達を待たずに計上した金額が、実際の納入告知書の金額と異なっている場合には、会計上は修正仕訳をしなくても、法人税申告書での申告調整で足りることになります。

とはいえ、そもそも一見面倒な、通常はまったく無視されているようなこの社会保険料の概算計上が法定福利費の月ズレの解消にあるのなら、少なくとも決算では概算額(未確定額)との洗い替えを仕訳によりキチンと計上すべきで、それが間に合わない場合にかぎって、法人税申告書上での申告調整を行うべきです。

なお、この申告調整額はいわゆる一時差異として税効果会計の対象となります。

( つづく )