労働保険料の会計処理についての考察

労働保険料の確定申告の特殊性と法人税法上の取扱い、そしてポピュラーな会計処理を考察したうえで、より正確と思われる会計処理をご提案します。

具体的には、概算保険料は前払費用として計上し、実際の給与等に基づく実額ベース(確定保険料相当額)の法定福利費を計上し、前払費用の残高は月々発生する確定保険料相当額と相殺する方法をご紹介いたします。

( 1 )労働保険料の会計処理の特殊性

労働保険料の計算期間が一律に4月1日から翌年の3月31日までであり、必ずしも法人の事業年度と一致していません。

しかも、保険料は概算額を前払いする必要があり、その概算保険料の納付のタイミングが年1回から3回であるため、会計上重要な「期間損益」をどれだけ厳密に反映させることができるのかという問題もあります。

さらに、概算保険料の支払いがある一方で月々の給料から天引きする雇用保険料の従業員負担分をどう処理するのかという問題もあります。

( 2 )労働保険料の税務上の取扱い

労働保険料の法人税法上の処理は、損金経理を要求しておらず、また、概算保険料もその納付時に損金算入が認められます。しかし、適正な期間損益計算を求めるならば、会計上はあくまで費用の期間帰属を重んじた処理が求められると思われます。

( 3 )ポピュラーな会計処理とその検討

労働保険料の会計処理については、概算保険料の計上をどうするか(費用(法定福利費)計上か資産(前払費用)計上か)、概算保険料に含まれる雇用保険料従業員負担分をどうするかということがポイントとなるのが一般的です。ポピュラーな処理と思われるものについて検討してみたいと思います。

( 4 )より正確な会計処理

会計上で費用計上するのはあくまで実際の給与等に基づく実額ベース(確定保険料相当額)とし、概算保険料は前払費用として計上し、前払費用は確定保険料相当額と相殺して減少させる方法をご紹介いたします。

( 5 )より現実的な会計処理

純理論的な期間損益計算を重視した方法からは後退するものの、法人税法のルールのメリットを活かした現実的な処理をご紹介いたします。