見積概算額を計上する場合の科目設定や仕訳

(月次)決算が早期化していること、また、期間損益計算の精度を高めるためには、金額の確定を待たずに概算額を計上することは避けられません。そのための仕訳入力についてコメントいたします。

概算額の計上のための勘定科目設定や仕訳処理

(月次)決算早期化、あるいは、損益計算をより適正化するために、金額の確定(とくに費用関係)を待たずに概算額を計上することが少なくありません。

引当金を計上しましょうとか、そういうお行儀のよい話ではありません。

たとえば、20日締めの請求書を待って未払計上していたのでは、(月次)決算作業が遅れるばかりでなく、21日から月末の取引が入っていないことになります。

2ヶ月ごとの水道料金の請求書を待って未払計上していたのでは、もし水道代が製造費用のなかで一定のウェイトを占めているとしたら、他の項目でいかに緻密な原価計算をしていたとしても、その精度には疑問をもたざるをえません。

「債務確定主義だから見積計上しない」「損金に算入されないから計上しない」という真の意味での税務ベッタリの会計処理ならば、そのような処理によって作られた財務諸表で経営診断や経営分析なるものをすることはいかがなものかという気もします。

となれば、概算計上は不可避的に発生するといえるでしょう。

概算計上する金額の算定が正しくなければあまり意味がないわけですが、それは一応正しいことを前提に、その金額を入力するレベルでコメントしたいと思います。

概算計上のための勘定科目の設定

概算計上だけに、確定額の計上とその戻し処理が行われます。

これを確実に行うためには、「確定額計上のための科目」と「概算額計上のための科目」を分けるべきです。

独立した勘定科目を設けてもよいですし、同じ勘定科目の中に補助科目を設けてもよいです。

理想は債権債務の科目と損益の科目の双方に概算計上のための科目を設定すべきですが、少なくとも債権債務だけは設定すべきです。

同じ科目の中で処理すると、どれが概算(とその取り消し)でどれが確定額かなんだかわからなくなりますし、残高も確定額を概算額の合計となるため、チェックがしにくくなります。

概算額専用の科目があれば、概算計上したものをちゃんと取り消したかを容易にチェックできますし、決算時には、税務調整するためのデータの収集を簡単にすることができます。

概算計上の仕訳

概算計上の仕訳の鉄則は、絶対に自動仕訳などで消費税等の額を発生させないことです。

仕訳では消費税が反映される損益科目については「(消費税)対象外」あるいは「不課税」として入力します。

損益の科目で概算計上額を入れるための科目を新設する場合には、その科目の消費税設定の標準を「(消費税)対象外」としましょう。

(借) ○○費(概算) 10,000 (貸) 未払金(概算) 10,000
「対象外」

概算額の戻しと確定額の計上

概算額を計上した仕訳は、通常は翌月の確定額を計上する仕訳の入力の際に取り消されます。

この取り消し処理は、概算額と確定額の差額を計上(差額補充方式)するのではなく、概算額をそっくりそのまま戻します(洗い替え方式)。

この場合、借方科目と貸方科目を逆にして計上する「反対仕訳」でもいいのですが、もし可能であれば、借方科目と貸方科目はそのままに、金額をマイナスにして計上するほうがベターです。

(借) ○○費(概算) -10,000 (貸) 未払金(概算) -10,000
「対象外」
(借) ○○費「課税」 10,000 (貸) 未払金 11,000
仮払消費税 1,000

(おわり)