( 4 )全銀行口座の予定残高一覧表の作成
「銀行口座残高を管理するExcelファイル」では、銀行口座ごとの資金繰り予定表を作成するとともに、すべての銀行口座の残高予測を一覧にすることを目的としています。
今回は、前回作成した銀行口座別の資金繰り予定表をベースにして、すべての銀行口座の予定残高を一覧できるようにします。
使える資金繰り予定表の枠組み(おさらい)
本稿では、将来の入金情報と出金情報を簡単に入力することで、複数ある銀行口座の残高を日繰りベースで一覧表でチェックできるような資金繰り予定表の作成を試みています。
その枠組みは、ひとつのフォルダを作って、その中に次の2つのExcelファイルを作成し、フォルダ内でリンクをするというものです。
- 入金予定と出金予定を管理するExcelファイル
- 銀行口座残高を管理するExcelファイル
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」に入出金予定のデータを入力すると、「銀行口座残高を管理するExcelファイル」で預金口座ごとの資金繰り予定表に反映されます。さらに、全預金口座の日ごとの予定残高を一覧表で確認することができます。
ポイントはふたつです。
- 当日の入金予定を考慮する以前の残高、すなわち、当日に予定されている支払予定額が前日の残高で足りているどうかをとらえることです。それによってタイムリーに口座間の資金移動を行うことになります。
- このファイルのためだけのデータ入力は絶対にNGです。このファイルのデータは、支払予定表のデータから流用したり、あるいは、この情報を会計データとして流用するなどして活用されなければなりません。
全銀行口座の予定残高一覧表
「銀行口座残高を管理するExcelファイル」では、銀行口座別にシートを作成し、各シートでは「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」に入力されたデータから、銀行口座別の資金繰り予定表を作成します。
具体的な作成のイメージは前回をご覧ください。
そして、すべてのシートを串刺しにして全ての口座の残高を一覧できるシート(全銀行口座の予定残高一覧表)を作ります。
全銀行口座の予定残高一覧表のシートの構成として、次のようなイメージが考えられます。
- 当日残高の一覧シート
- 当日入金前残高の一覧シート
当日入金前残高とは、当日の入金予定額を考慮しない残高です。すなわち、当日に予定されている支払予定額が前日の残高で足りているどうかを把握することです。
単純な当日残高では、当日の入金額を織り込んだ残高のため、もし当日に入金がないと残高不足となり資金ショートしてしまいます。
このような状況をとらえるために当日入金前残高という概念を採っています。これによって前日までにタイムリーに資金移動を行うことができるのです。
シート間の串刺し
「銀行口座残高を管理するExcelファイル」では、すでに多数のシートが作られ、それぞれのシートが銀行預金口座の資金繰り予定表となっています。
ここに新たなシートを2つ作成します。「当日残高の一覧表」のためのシートと、「当日入金前残高の一覧表」のためのシートです。
- A列に日付、B列に全銀行口座の合計値、C列以降に各銀行口座とします。B列に合計を出すのは、口座数が多いといちいち右にスクロールする面倒なことを避けるためです。C列以降の銀行口座の並びは、シートの順序と同じにすると作業がしやすいです。
- A列の日付は、各シートの資金繰り予定表の日付とまったく同じになるように行を調整します。
- まずは、隣のシートにある銀行口座からのリンクを試みます。
- 「当日残高の一覧表」シートであれば当日残高を、「当日入金前残高の一覧表」シートであれば当日入金前残高をリンクさせます。各シートの日付と位置が同じなので、LOOKUP系の数式を入れる必要がないためシンプルです。
- 下まで一気に数式をコピーします。
- 念のため、リンクさせた銀行口座のシートと整合性を確認します。
- 気をよくして、すべての銀行口座からのリンクを取ります。
- B列に、C列以降の合計値を返す数式を入れ、下まで一気に数式をコピーします。
- これによりB列で、すべての預金口座の残高の合計額が出てくることになります。
残高がマイナスの場合にセルに色が付くように設定
ところが、これでは数字がただ羅列されているだけです。
もっと視認性に優れたものにできればより実践的です。
たとえば、残高がマイナスの場合にはセルに色が付くように設定することが考えられます。
「ホーム」→「スタイル」→「条件付き書式」→「セルの強調表示ルール」→「指定の値より小さい」で、 値がゼロ未満になったらセルを赤くするようにするように設定するのです。
とくに、当日入金前残高の一覧表で、残高がマイナスになるということは、前日末の残高では当日の支払いに足りないため(当日の入金でカバーできるかもしれませんが)、前日までにどこかの口座から資金移動をしなければならないことを意味しています。
使用と展開
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」に日付や口座などをまったく順不同でとりあえず入力しただけで、「銀行口座残高を管理するExcelファイル」にある銀行口座別のシート「(口座別)資金繰り予定表)」に日付別に入出金情報がただちに反映されます。
さらに、各銀行口座の日付ごとの残高をひとつのシートで確認できるため、いつどの口座の残高がマイナスになってしまうのかをすぐに把握することができるようになります。
ここでは、資金繰り、とくに、短期的な日繰り予定表として使えるようにしましたが、工夫次第でより中長期的な資金繰り予定表あるいは経営計画に展開することができます。
( つづく )