( 2 )入金予定と出金予定を管理するExcelファイルの作成
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」とは、「いつ」「どの銀行口座から(銀行口座に)」「どんな種類の金額が」「入金」または「出金」するのかを入力し管理するファイルです。
重要なのは、このファイルのためだけのデータ入力はしないということです。このファイルの情報は、支払予定表のデータからコピー&ペーストで流用したり(あるいはそもそも支払予定表をそのまま使えるようにフォーマットを作るのもアリです。)、あるいは、この情報を会計データとして流用するなどして活用されなければなりません。
使える資金繰り予定表の枠組み
本稿では、資金繰り予定表について、特に下記の点を克服することを狙っています。
- 借入金返済などの口座振替(引き落とし)があるので、その前に確実に資金移動できないか
- けっこうな数の預金口座があるが、残高推移を一目で管理できないか
- どの口座がいつ残高がマイナスになるのかパッと見でわかるようにできないか
- 資金繰り予定表を作るのが大変で作成それ自体が目的化しているのを何とかできないか
具体的には、将来の入金情報と出金情報を簡単に入力することで、複数ある銀行口座の残高を日繰りベースで一覧表でチェックできるようにします。
その枠組みは、ひとつのフォルダを作って、その中に次の2つのExcelファイルを作成し、フォルダ内でリンクをするというものです。
- 入金予定と出金予定を管理するExcelファイル
- 銀行口座残高を管理するExcelファイル
具体的には、「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」のデータが、SUMIFS関数によって「銀行口座残高を管理するExcelファイル」に返されることになります。
入金予定と出金予定を管理するExcelファイルとは
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」とは、「いつ」「どの銀行口座から(銀行口座に)」「どんな種類の金額が」「入金」または「出金」するのかを入力し管理するファイルです。
シートの構成としては、次のようなイメージが考えられます。
まず、A列では、「X」でも「あ」でも「*」でも、とにかく何かを入力してずっと下までコピペします。その理由は、B列以降でいろいろなものを入力しますが、行を空けて入力してもフィルターでひっかかるようにするためです。
B列以降の列は、基本的に「日付」「銀行口座」「項目(種類)「入金」「出金」「備考」のような項目を設定することが考えられます。
入力については、同じ日にいくつの支払いを入力してもかまいません。月末定時払いで何十件何百件の振込みがあっても大丈夫ですし月末にいくつも借入金の返済があってもよいのです。
空白の行を作っても、A列で全行をすべてつなげているので、フィルターで引っかかりますので、詰めて入力する必要がありません。
口座間の資金移動の場合にも、同日にある銀行口座の出金と別の銀行口座の入金とすればよいのです。
日付けが前後しても、集計にはSUMIFS関数を使うので、まったく気にする必要がありません。
また、月末が休日の場合に引き落としが月初になる場合でも、日付を正確に入力できます。
SUMIFS関数の使用と計算結果の確認
本稿での資金繰り予定表の枠組みは、ひとつのフォルダを作って、その中に次の2つのExcelファイルを作成し、フォルダ内でリンクをするというものです。
いろいろなアプローチがあるかとは思いますが、ここではSUMIFS関数を使います。
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」のデータが、SUMIFS関数によって「銀行口座残高を管理するExcelファイル」に返されることになります。
とはいえ、最初は同じシートでSUMIFS関数を設定しイメージどおりの集計ができているか確認してから、別のファイル(「銀行口座残高を管理するExcelファイル」)でSUMIFS関数を設定すべきです。
異なるファイル間をリンクさせて数式を設定する場合、セルだけでなくファイル名も加わるため長くなり確認が難しくなりわけわからなくなるからです。
SUMIF関数の使用
SUMIFS関数を使う前に、SUMIF関数の使い方を確認しておきます。
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」では、「日付」「銀行口座」「入金」「出金」が順不同で入っています。しかも、特定の日に多数の取引先に対する支払いや入金があり大量の行数があります。
「日付」列、「銀行口座」列、「出金」列がある場合、SUMIF関数では「特定の日付での出金額の合計値」「特定の銀行口座の出金額の合計値」を返すことができます。
たとえば、特定の日付での出金額の合計値を返したいものとします。
- 任意のセルに特定の日付を入力し、その周辺のセルでSUMIF関数を入力します。
- SUMIF関数を選択するとダイアログボックスが現れます。
- 「範囲」「検索条件」「合計範囲」と出てきます。
- 「範囲」で、「日付列」で少なくともデータが入力されている行までを選択します。実際には相当余裕をもってかなり下の行まで選択します。
- 「検索条件」で、特定したい日付のセルを選択します。
- 「合計範囲」で「出金列」の少なくともデータが入力されている行まで選択します(通常は上記の「範囲」と同じ)。実際には相当余裕をもってかなり下の行まで選択します。
SUMIFS関数の使用
「特定の日付における特定の銀行口座の出金額の合計値」という複数の条件を付けるにはSUMIFS関数を使います。
- 任意のセルに特定の日付を入力し、その近くのセルに特定の銀行口座を入力し、その周辺のセルにSUMIF関数を入力します。
- SUMIFS関数を選択するとダイアログボックスが現れます。
- 「合計対象範囲」「条件範囲1」と出てきます。
- 「合計対象範囲」で「出金列」の少なくとも金額が入力されている行まで選択します。実際には相当余裕をもってかなり下の行まで選択します。
- 「条件範囲1」で、「日付列」で少なくともデータが入力されている行までを選択します。実際には相当余裕をもってかなり下の行まで選択します。
- すると、ダイアログボックスに「条件1」が出てきます。
- 「条件1」で、「特定の日付」を入力したセルを選択します。
- すると、ダイアログボックスに「条件範囲2」が出てきます。
- 「条件範囲2」で、「銀行口座列」で少なくともデータが入力されている行までを選択します。実際には相当余裕をもってかなり下の行まで選択します。
- すると、ダイアログボックスに「条件2」が出てきます。
- 「条件2」で、「特定の銀行口座」入力したセルを選択します。
- そして「OK」で終了すると、特定の日付における特定の銀行口座の出金額の合計値が返されています。
フィルターもしくはピボットテーブルでチェック
計算結果が正しいかどうかを、ピボットテーブルを作成してチェックしたり、「日付列」「銀行口座列」をフィルターして合計値と一致しているか確認します。
「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」の中でSUMIFS関数の入力と計算結果の確認が終了したら、いよいよこれを別のExcelファイル「銀行口座残高を管理するExcelファイル」で使うことになります。
これらはピボットテーブルを作成することでもよいわけですが、「入金予定と出金予定を管理するExcelファイル」の入力と同時に(ピボットテーブルの更新をすることなく)結果を見たい場合や、別ファイルで多数の銀行口座の状況を同時にチェックしたい場合にはこの方法がよいかもしれません。
フォーマットも確立してきたらピボットテーブルやマクロで対応できるかもしれませんが、表を作ることが目的ではなく表を利用して経営に役立てることが目的なので本末転倒とならないことが肝要です。
重要なこと
ポイントは、それぞれの事業所での最終的なフォーマットが固まるまではとにかくシンプルなフォーマットで試行錯誤をすることです。あまりにも欲張りすぎると、結果的に一歩すら踏み出せません。何の情報が必要なのかを見極めながら進むべきです。
そして、このファイルのためだけのデータ入力はしないということです。
このファイルの情報は、支払予定表のデータからコピー&ペーストで流用したり(あるいはそもそも支払予定表をそのまま使えるようにフォーマットを作るのもアリです。)、あるいは、この情報を会計データとして流用するなどして活用されなければなりません。
( つづく )