経営管理のための売掛債権データベースの作成
会計システムや販売管理ソフトからの情報をうまく利用して、自社向けに使いやすいデータベースの作成方法についてコメントいたします。
( 1 )会計情報から得られる経営管理資料の限界
企業活動は多岐にわたりますが、会計ソフトに入力される情報は、このうち会計事実だけです。しかも、「一般に公正妥当と認められた会計基準」という財務会計(制度会計)の一般的ルールに拘束されています。 ということは、会計情報から得られるのは、会計事実が会計上のルールで入力された限定的な情報なのです。予算実績対比額や部門別損益計算書や製品別損益計算書やプロジェクト別損益計算書といっても、けっきょくは財務会計(制度会計)のルールに則って入力された情報を、異なる切り口で見ているにすぎません。
( 2 )データベースの概要と作成のポイント
「受注情報データベース」と「請求・回収データベース」のふたつを作成します。次に、得意先別、受注番号別、会計上または経営管理上のグループ別にデータを並べ替えたり集計して、ふたつのデータベースを結合して目的に応じた情報を作成します。 これらの作業でミスをなくすためには、データベースはできるだけ簡素なものとし、数値のみならず文字列についても直接入力をしないようにすることが重要と考えられます。
( 3 )受注情報データベース
受注情報は、もともと独自のデータベースで管理されていることが多いものですが、これに会計上必要なデータ(会計上あるいは経営管理上のグループ、消費税情報を加えた請求額)を加えていきます。 ひとつの受注番号を1行にする必要はありません。複数の売上計上区分やグループから構成される場合には数行で処理します。
( 4 )請求・回収情報データベース
少なくとも月次決算で売上高の計上を得意先への請求額で計上している場合には、請求・回収情報データベースが売掛金残高の明細という役割を果たします。 しかも、会計情報からでは得意先別に限定されがちなものを、受注番号別やグループ(プロジェクト)別などきめ細かくブレイクダウンすることが可能です。 また、とくに外貨額について会計上いくらで計上したのかとは無関係に計上するため、会計上、売掛金残高を円換算する際のチェック資料にも利用することができます。
( 5 )売掛債権データベースの利用
ふたつのデータベースについて、得意先別、受注番号別、グループ別などの必要な目的に応じて集計し、情報を結合します。 結合にあたっては、一定の期間の情報のみを集計する方法と、特定の 2 時点での過去のすべての累計データを抽出・集計して、その差額をもってその期間内のデータとする方法が有効な場合もあります。 会計上の売上高情報を加えるだけでなく、受注番号を共通のキーとして、製造番号等とその情報によって生産活動情報と結びつけたり、買掛債務データベースも作成してこれを結びつけることできます。