( 1 )会計情報から得られる経営管理資料の限界
企業活動は多岐にわたりますが、会計ソフトに入力される情報は、このうち会計事実だけです。しかも、「一般に公正妥当と認められた会計基準」という財務会計(制度会計)の一般的ルールに拘束されています。
ということは、会計情報から得られるのは、会計事実が会計上のルールで入力された限定的な情報なのです。予算実績対比額や部門別損益計算書や製品別損益計算書やプロジェクト別損益計算書といっても、けっきょくは財務会計(制度会計)のルールに則って入力された情報を、異なる切り口で見ているにすぎません。
会計情報から入手する経営管理資料
企業活動は多岐にわたりますが、会計ソフトに入力される情報は、このうち会計事実です(かつ、これで足ります)。
しかも、会計ソフトに入力する情報は「一般に公正妥当と認められた会計基準」という財務会計(制度会計)の一般的ルールに拘束されています。
予算実績対比額や部門別損益計算書や製品別損益計算書やプロジェクト別損益計算書といっても、けっきょくは財務会計(制度会計)のルールに則って入力された情報を、異なる切り口で見ているにすぎません。
仮に、ソフトに会計事実以外の情報を数多く入力したとしても、数値情報は結局のところ会計のルールによって計算、出力されるものですし、経営管理情報を会計ソフトの情報のみから入手しようとすると膨大な入力情報や多額のシステム投資を要しかねません。
この場合、その作業(とその検証)に係る時間や投資に見合うだけの有用な情報が得られているか、有用な情報が得られたとして十分に評価・活用されているかというのは、さらに難しいところではないでしょうか。
売掛金勘定から得られる情報の限界
売掛債権データベースというと、得意先別の売掛金(総括)表がイメージできるのではないでしょうか。 これは、各得意先ごとに、一定の期間における請求額と回収額を一覧表にしたものです。 会計処理での売上高の計上を(少なくとも期中処理において)得意先に対する請求書の発行(送付)によって行っている場合、各月末において、各得意先の未回収額の合計が会計上の売掛金残高となります。 この場合には、売掛金勘定に得意先ごとに補助科目を付けることによって、会計ソフトの補助元帳をもって得意先別の売掛金 (総括)表ができることになります。
財務会計の目的や、会社法や税法で求められている範囲では、これで基本的には十分です。
ここで、得意先別ではなく、得意先別&製品別の売掛債権情報がほしいとします。
たちまち思考停止状態に陥ります。
なぜなら、会計ソフトに入力する情報は、各得意先に対する請求書の(合計)金額を1本で行うことが一般的であり、そして各得意先からの入金も入金額を1本で仕訳入力されることが一般的でないかと思われます。 たとえば、ある得意先に発行されたひとつの請求書の内容が、複数の製品やサービス、あるいは複数の注文番号から構成されているとします。 会計ソフト上は請求書の合計金額を1本で仕訳計上し、回収のときもその回収額を1本で仕訳計上することになりますが、この入力情報から経営管理に有用なデータを得ることはほぼ不可能です。
よって、製品別の売掛金情報はないために、会計ソフトの情報をそのまま使うことは困難です。
損益計算書(PL)ベースで製品別の売上高を把握していたとしても、会計ソフトに製品別で売上高(請求額)を入力することは煩雑であったり、あるいは、データをアップロードするためのソフト上のカスタマイズが面倒だったりします。会計上で計上されている売上高は消費税抜きの本体価格である一方、入金額は消費税込みの金額であるために、請求額と回収額をダイレクトにマッチングができません。まして、回収額が現金(振込など)ではなく手形の受取りである場合には、会計上の売掛金勘定の残高が減少したからといって本当の意味での回収(資金化)とはいえないという考え方もあります。
このようなことを考えると、経営管理情報を会計ソフトに入力したデータから作り上げるのには限界があり、逆に、経営管理情報を会計ソフトの情報から作り上げようとして会計ソフトへの入力情報をいたずらに膨大にするのも得策とはいえません。 なにより、経営管理は財務会計(とそのルール)に拘束される必要はまったくありません。
そこで、請求書情報を会計ソフトではなく別個のデータベース(Excel等)で管理することになります。
結局どんな情報が欲しいのか
重要なのは、イージーにシステム投資に流れるのではなく、「どんな情報が必要なのか」「その情報でナニがしたいのか」に応じて、必要最小限なコストで最大のパフォーマンスを得ることです。けっこうなパッケージを導入し、しかも個別的なカスタマイズに多額の投資はしたものの、使い勝手が悪く効率が落ちたり、データの検証に時間を要したり、せっかく作成したデータが十分に評価・活用されないまま宝(であればこれ)の持ち腐れになってしまうことを避けることにあります。
具体的には、バラバラに存在している既存のデータベースからの情報をうまく結びつけて必要な情報を効率よく作り出し、しかも、ニーズの変化に応じて、フレキシブルに変化させられるようにすることです。
会計ソフトをいたずらにカスタマイズする投資を節約できるだけではありません。財務会計ルールという拘束から解放され、非会計データも含めたまさに白紙の状態から作り込むことができます。
また、基本的にExcelシート上で作るため、作成者にとって効率的であるばかりでなく、検証者にとっても検証が容易であり(したがってミスが発見しやすくなることにもつながります。)、そのときどきにリクエストされる情報に合わせてデータやフォーマットを追加・加工することが可能なのです。
( つづく )