( 2 )データベースの概要と作成のポイント

「受注情報データベース」と「請求・回収データベース」のふたつを作成します。次に、得意先別、受注番号別、会計上または経営管理上のグループ別にデータを並べ替えたり集計して、ふたつのデータベースを結合して目的に応じた情報を作成します。

これらの作業でミスをなくすためには、データベースはできるだけ簡素なものとし、数値のみならず文字列についても直接入力をしないようにすることが重要と考えられます。

イメージ

受注情報や請求情報は、すでに販売(請求)ソフト等によりデータベース化されています。

このデータベースの情報をExcelに落として経営管理目的にカスタマイズするというイメージです。

(STEP1)ふたつのデータベースの作成

  • 受注情報データベース
  • 請求・回収情報データベース

たとえば、数量情報は在庫管理では極めて重要であり、また単価情報も請求金額に影響することから重要ですが、すでに請求金額は計算されており、目的が売掛債権の管理ということになると、単価情報や数量情報は必ずしも必要ではありません。

いっぽう、会計目的や経営管理目的で製品やサービスについて何らかのグルーピングを行っている場合には、これらの情報を追加しなければなりません。

販売(請求)ソフトでも、受注番号の情報はデータ化されていますが、プロジェクトや売上の種類は内部的なものなので販売(請求)ソフトのデータベースには通常反映されていません。これらの情報を追加することになります。

(STEP2)目的別の集計とデータベースの統合

次に、このデータベースを目的に応じて並べ替え・集計します。たとえば、得意先別、プロジェクト別、受注番号別などです。

売掛債権データベースから得られる情報

売掛債権データベースから得られる情報として、たとえば次のようなものがあります。

  • 受注番号別の未請求残高や未回収残高
  • 会計上や経営管理上のグループ別の未請求残高や未回収残高

さらに次のように拡大することができます。

まず、会計上の売上情報を加えることによって、単純な請求と回収の関係から、受注番号に対してどの程度売上高が計上されているのか、これに対してどの程度の請求が行われているのかという情報を得ることができます。

これによって、会計ソフトでは売掛金勘定を一般的な得意先別でしかブレイクダウンできないものを、工事進行基準のようなプロジェクト別などの別の切り口で作り上げることが可能です。また、一つの得意先の中に異なるタイプの売上計上基準が含まれていても容易に対応できます。

また、手形による回収情報とその決済(割引等を含みます)の情報を加えることによって、請求と回収が、単純な会計上の売掛金勘定の増減から、現実にどの程度資金化したのかという情報を得ることができます。

さらに、売上という側面ではなく、製造や仕入れといった売上原価サイドの情報とも結びつけることができ、さらには、支払(手形決済)情報とも結びつけることによって、受注番号やプロジェクト別の費用や収益の発生状況やキャッシュフローを作成することも可能となります。

データベース作成のポイント・・・可能な限りシンプルに

見せるシートと作るシートは違う

データベースは可能な限りシンプルなものでなければなりません。その理由は、誰でも作成でき、誰でも検証ができるようにするためです。

ありがちなこととして、小計行を入れるなどグループ化しているシートをよく見かけます。

この手のシートに限って、どんどん内容が増えていくとややこしい行や列の挿入によって「数式切れ」が起きたり、並べ替えでおかしなことになってしまいます。

「見せるシート」と「作るシート」を混同してはなりません。

数式は可能な限り入れない

目的別に応じて並べ替えや集計を行うため、タテ(列)方向の数式を使うことはキケンです。私の場合、ヨコ方向、せいぜい税抜金額に消費税率を乗じた税込金額を算定する数式だけでしょうか。

なお、税抜金額に消費税率を乗じた税込金額を算定する数式では、かならず円未満の端数処理を行いましょう。

ここで悩ましいのが、実際の請求書自体がこの端数処理がされていないため、見た目の金額(通常は円未満が四捨五入)で請求されて入金されてしまう場合です。

この場合には、実際の請求書それ自体が正しいため、請求書の金額に合わせることになります。ただし、データベース上では1円未満の端数は生じないようにしましょう。

データベース作成のポイント・・・数値のみならず文字列も可能な限りしない

データベースは作成で終わってしまってはほとんど意味がありません。そこから情報を集計・加工し新たな情報を作り出し、それを評価して経営に活かすことが必要です。

データベースについては、たとえば得意先別、プロジェクト別、注文番号別など、それぞれの目的に応じてExcelのフィルター機能によって並べ替えと集計を行い、集計額によって新たな資料やデータを作っていくことが重要なのです。

そのためには、Excelのフィルター機能が有効に機能し、並べ替えや集計ができなければなりません。

このような場合、データベースでの入力ミスは可能な限り避けなければなりません。

受注番号や製品情報、それに基づく数値等のデータは、それぞれのデータベースで管理されていることは多いものです。 そこで、数値のみならず文字列も含めて元データからのコピペ(コピー&ペースト)で対応し、直接入力は可能な限り控えるべきです。

そうでないと、セル上は同じように見える文字列でも並べ替えをするとうまく並べ替えられなないことが起きてしまうのです。 並べ替えがうまくいかない場合の修正は困難とはいえませんが、問題は、並べ替えがうまくいっていないのにそのまま集計されてしまい、その後の作業で並べ替えがうまくいっていないことが判明してまた前の作業を繰り返す時間的なロスです。

データベース作成のポイント・・・1行管理という固定観念からの解放

ひとつの受注番号でも、会計上で異なるグルーピングがなされる複数のプロジェクトから構成されるものもあれば、複数の受注番号で、会計上はひとつのプロジェクトとして集計しなければならないものもあります。

また、相手方への請求書は必ずしもひとつの注文番号における受注金額(に消費税を乗じた額)に限りません。 ひとつの注文番号について、数回の請求を行うこともあれば、複数の注文番号について1通の請求書で請求を行うこともあります。

ひとつの受注番号を1行で管理しなければならないというルールも、1通の請求書を1行で管理しなければならないというルールはありません。 データベース上は複数行で入力してまったく問題ありません。 Excel上でひとつの受注番号や請求番号が数行にわたっていても、フィルター機能ですぐに確認・集計できますし、情報に応じて細分化しているからこそ、目的に応じて自在に集計することができるのです。

( つづく )