( 3 )不動産投資の損益分岐点とは

不動産投資の成否は、その不動産を売却(投下資本回収)した後で当初からどれだけおカネが増えたのかどうかにあります。

初期の自己資金支出額(マイナス)から投資後のキャッシュ・フロー累計額(通常プラス)を合計した金額に、想定される売却時点における債務(敷金や借入金残高)を合計した額が、想定される売却時点における損益分岐点売却額となります。

不動産投資の損益分岐点

不動産投資の成否は、その不動産を売却(投下資本回収)した後で当初からどれだけおカネが増えたのかどうかにあります。

なるほど、投資後その不動産からのキャッシュ・フローだけで、初期投資の自己負担額を回収できたり、借入金を完済できたら投資としては成功となります。

しかし、一般的に長期にわたるため、途中での投資終了すなわち不動産売却を想定した場合、いくらで売却できれば初期投資などを回収できて投資として成功したといえるのかをチェックしておくことは有用と考えられます。

いくらで売却できれば成功といえるのか、それが損益分岐点です。

私の場合、損益分岐点の売却額は次のように算定しています。

  • 初期投資(不動産取得時)における自己資金支出額を捉えます。
  • 投資後のキャッシュ・フローの累計額を集計します。
  • 想定される売却時点における債務(前受家賃や敷金や借入金の残高、想定される事業税など)を算定します。
  • 初期の自己資金支出額(マイナス)から投資後のキャッシュ・フロー累計額(通常プラス)を合計した金額に、想定される売却時点における債務(敷金や借入金残高など)を合計した額が、想定される売却時点における損益分岐点売却額となります。

初期投資(不動産取得時)における自己資金支出額

まずは、不動産を取得したときにどれだけ自分のおカネを出したかを算定することが出発点です。

この資金を、不動産保有中に回収していればすでに投資は成功となります。

不動産の取得は、その一部または全部を借入金によって調達することもあります。この場合は、自己資金の支出額はゼロとなりますが、借入金を不動産から生じるキャッシュのみで返済できれば投資は成功となります。

投資後のキャッシュ・フローの累計額

不動産の保有中にどれだけのキャッシュ・フローがあったかの累計額を算定します。これがもっとも重要です。

所得税のルールでの不動産所得の情報では、住民税の支払いや敷金の受け入れや返還、借入金の元本返済額がまったく反映されていません。

そこで、確定申告のために行った不動産所得の会計情報をキャッシュの情報に変更します。

その前提として、不動産所得の会計情報をいかに正確に算定するかが極めて重要です。

興味深いのは、不動産所得が発生して所得税や住民税も負担しているはずなのに、年々キャッシュ・フローがマイナスということがあります。

その理由は、借入金の返済額が大きいためです。

損益分岐点売却額

投資後その不動産からのキャッシュ・フローだけで、初期投資の自己負担額を回収できたり、借入金を完済できたら投資としては成功となります。

しかし、一般的に長期にわたるため、途中での投資終了すなわち不動産売却を想定した場合、いくらで売却できれば成功なのかをチェックしておくことは有用と考えられます。

初期投資の自己負担額を、投資後のキャッシュ・フローと不動産の売却額の合計額で回収できれば、投資としては成功となりますし、投資金額を一部借入金によって調達した場合は、不動産の売却額によって借入金を完済して自己負担分も回収できれば成功になります。

ところで、中古不動産を購入するときには、敷金や前受家賃は差し引かれて支払いを行ってます。逆に、売却の時は、敷金や前受家賃を差し引かれた額が入金することになります。

そこで、売却時点を想定して、その時点における債務(前受家賃や敷金や借入金の残高)を算定します。

より厳密には、売却時点が年の途中であればその期間のキャッシュ・フローを取り込んだり、売却額に含まれる建物部分の消費税額(土地部分は消費税は非課税)や、売却益が発生した場合の所得税や住民税(分離課税)を織り込んだりしたうえで判定されることになります。

(つづく)