休眠会社にみなし解散からみなし清算はあるか

法務局の「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」により、最後の登記から12年経過した株式会社は、職権によるみなし解散が行われます。そして、みなし解散の登記から3年経過するとその会社は再び解散前の事業ができなくなりますが、法人が消滅する(みなし清算)わけではありません。

また、解散登記から10年経過すると、登記官は登記記録を閉鎖することができますが、これによって法人が消滅する(みなし清算)するわけではありません。

結局、会社を消滅させるには、清算事務を終了させ、清算結了登記をするしかありません。

会社を消滅させるには

株式会社は設立登記によって成立します(会社法49条)。では、株式会社を消滅させる(法人格を失わせる)にはどうすればよいでしょうか。

合併されて消滅する場合を除き、株式会社を消滅させるには、まず株式会社を解散することが必要です(会社法471条)。 株式会社の解散は、破産開始手続決定や解散を命ずる裁判など特殊な要因もありますが、定款に存続期間や解散する事由を定めていない場合、一般的には株主総会の決議で行われます。

しかし、解散をしただけでは会社は消滅せず、清算が結了するまでは存続します(会社法475条1項)。

事業を休止している株式会社

事業を休止している株式会社は多数存在します。また、解散をして清算手続中の株式会社も多数存在します。いずれも、法律上は株式会社として存続しています。

さて、解散から清算結了までの手続きを公示したり、あるいは、その旨を諸官公庁に届け出るときの証明のためには登記が必要です。登記には費用(登録免許税ほか)がかかります。

もともと株式会社は商号や本店所在地、資本金の額や役員の改選があった場合には登記をしなければなりませんが、これらの事由が発生しても、登記費用の関係から過失または故意により登記を行わないことも現実的に少なくありません。

株式会社を消滅させるにも費用がかかることから、事業を休止したまま何もしないまま放置されている場合も少なくありません。

みなし解散

そこで、一見朗報と誤解しやすいものがあります。法務局による「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」によるみなし解散(会社法472条1項)です。

最後の登記から12年経過している株式会社に対して、官報での法務大臣の公告と本店管轄登記所から公告が行われた旨の通知が行われます。

公告の内容は、「公告の日から2ヶ月以内に「まだ事業を廃止していない旨」の届出も登記もされないときはその株式会社は解散したものとみなされる」というものです。なお、登記所からの通知が何らかの理由で届かない場合であってもみなし解散の手続きは進められます。

平成29年の場合は、10月12日付で官報への公告が行われ、12月12日までに届出や登記をしない場合には、12月13日付で法務局登記官により職権で解散登記がなされます。

それまでの12年間に変更登記等を放置して登記費用を節約でき、しかも、解散登記もやってもらえるという点で有益な制度と思いがちですが、ガッチリ過料を課されます。

みなし解散登記から3年経過すれば「みなし清算」となるか

さて、先ほど申し上げたとおり、解散だけでは株式会社は消滅せず、清算人が清算事務を行います。

清算事務は何年以内にやらなければならないとの規定はありません。 また、清算が結了するまでは、株主総会の特別決議で解散前の状態に戻して事業を再び行う(会社の継続)ことができます。

ただし、職権によりみなし解散の登記をされた株式会社が、株主総会の特別決議によって会社を継続することができるのは、みなし解散の登記後3年以内に限られています(会社法473条)。

この、「株式会社を継続」という文言から、みなし解散の登記がされてから3年経過すればその会社は清算結了となる(法人格が消滅する)としているサイト等もありますが、それは正しくありません

この場合の株式会社の継続は、「(清算事務を中止して解散前の通常の事業活動を)継続する」という意味です。

つまり、みなし解散の登記から3年経過すると、「まだ事業を廃止していない旨」の届出が受理されない、すなわち、その株式会社は二度と解散前の通常の事業活動を行うことができないということにとどまります。法人格が消滅するわけではありません。

解散登記から10年経過すると「みなし清算」となるか

解散の登記がされた株式会社は、清算中の会社ということになります。

みなし解散とされた会社は、みなし解散の登記から3年以内に「まだ事業を廃止していない旨」の届出をしなければ、清算事務以外にもはや再び業務をすることはできなくなります。

ちなみに、法務局の職権でのみなし解散ではなく、定款の規定や株主総会の決議により解散した場合には清算結了前ならいつでも事業を再開(株式会社の継続)ができます。

みなし解散の場合であっても、定款の規定や株主総会の決議により解散した場合であっても 、解散の登記をした後10年経過すると、登記官はその株式会社の登記記録を閉鎖することができます(商業登記規則81条1項1号)。

これも、一見、職権による「みなし清算」のように思えますが、登記記録を閉鎖することにとどまり、会社の法人格が消滅するわけではありません。

その根拠として、登記記録を閉鎖しても、会社が本店を管轄する登記所にまだ清算を結了していない旨の届出をすれば、登記官は登記記録を復活させなければならないからです(商業登記規則81条3項)。

むしろ、登記記録が閉鎖されてしまうと、もし会社が土地などを持っていた場合に会社の実印の印鑑証明ができないなど不都合が生じます。

結局、 みなし清算というものはなく、みなし解散をされていても、清算人の選任をし(登記事項)、清算事務を終了して清算結了(登記事項)しなければ、最終的に会社は消滅しないのです

法律にお詳しい方で、「お前バカだな、みなし清算の条文はこれだよ」というのがあればぜひお示しいただきたいと思います。

みなし解散の登記から相当期間が経過し、登記記録も閉鎖された後は?

登記官によるみなし解散の職権登記が行われ、解散前の事業ができる旨の登記が可能な3年が経過し、さらに一定の期間が経過して登記記録が閉鎖された後はどうなるでしょうか。

職権によるみなし解散の登記から3年経過しているため、再び会社の事業を行うことは不可能です。残された道は、キチンと清算事務を行って清算結了により堂々と会社を消滅させることだけと思われます。

まずは閉鎖されている登記記録を復活する手続を行います。 新しい代表取締役ではなく(代表)清算人を選出します(登記が必要です)。 さらに、清算手続を行い、清算結了(登記が必要です)してようやく会社が消滅することになります。

何となく理不尽のようにも思われますが、けっきょく、株式会社を設立しながら法律上の義務である登記を怠り続けた株主の責任に帰するものと思われます。

なぜなら、(代表)取締役を選任(取締役会設置会社の場合は取締役会を通じて間接的に代表取締役を選任)したり解散などを決議するのは、けっきょく株主(総会)だからです。

「さんざん何もしないでおいて、この期に及んで何なの?」ということになると思われます。

登記を怠ってきた会社が、法令に従って登記費用を負担しながら登記をしてきた会社よりもオトクな結果となるのは、一般的な社会通念上公平を欠くと思われます。

(余談)有限会社にはみなし解散はなし

ちなみに、このみなし解散の規定は(特例)有限会社には適用されません。株式会社のみの規定です。

なぜなら役員の任期が法定されていないため役員変更(重任)登記を要しないからです。

よく、「ナントカ無料相談」で、有限会社なのに「そのまま放っておけばみなし解散になるから」と役所の担当者や専門家が指導しているという話を聞きます。安かろう悪かろうの典型例といえます。

かつて、「有限会社じゃカッコ悪い」と、無理やり1,000万円をかき集めた時代がありました。かつて有限会社の設立には資本金300万円なのに対して株式会社は1,000万円でなければならなかったのです(最低資本金制度)。しかも、当時すでに存在した株式会社(資本金200万円)も資本金1,000万円に増資しなければなりませんでした。

その後、最低資本金制度は撤廃され、会社法施行(平成18年5月1日)から有限会社という呼称もなくなり、資本金1円でも株式会社が設立できる時代となりました。

会社法施行の際でも、名よりも実をとって有限会社のままにした会社は、「特例有限会社」となって現在に至ります。

いっけんおかしな話ですが、逆に言えば、有限会社は積極的な清算手続と清算結了登記をしないかぎり、登記上は永遠に生き続けると思われます。

( おわり )