訴訟から学ぶ非上場株式の価格算定とその理論的根拠 Part1

アートネイチャー株式代表訴訟事件は、会社が行った自己株式の処分および第三者割当による新株発行につき、取締役に法令違反があったとして損害賠償を求めた株主代表訴訟です。最高裁まで争われました(最高裁判所第一小法廷平成25年(受)第1080号損害賠償請求事件、平成27年2月19日判決)。

自己株式の処分も新株発行も、ともに旧商法時代に行われました(平成15年11月、平成16年3月)が、規定および趣旨は現行会社法にも受け継がれています。

自己株式処分、新株発行のいずれも、「(発行)価額が著しく不公正かどうか」すなわち「公正な価額はいくらか」が出発点となります。

このため、この裁判では多くの専門家が株価を算定し、その算定過程について裁判所が詳細に検討したという点で、実務上参考になる点が多いと思われます。

さらに、アートネイチャー株主代表訴訟は、平成18年3月の新株発行についても別の裁判で争われました。これについての考察も加えています。

( 1 )アートネイチャー株主代表訴訟最高裁判決における実務上の対応

自己株式処分、新株発行のいずれも、「(発行)価額が著しく不公正かどうか」すなわち「公正な価額はいくらか」が出発点となります。

最高裁は、非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていた場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと判断しました。

( 2 )事案と各裁判の概要

アートネイチャー株式代表訴訟事件の全体像をつかむために、事実関係を時系列的に紹介し、また第1審および抗告審でどのような争いや結論があったのかその概要をまとめました。

( 3 )裁判で争われた株価の概要

これら複数の専門家の算定方法や算定結果の概要について、第1審および抗告審でどのようなものがあったのかその概要をまとめました。

( 4 )第1審での株価算定

素材は、東京地裁平成19年(ワ)第25583号損害賠償請求事件(平成24年3月15日判決)です。

( 5 )抗告審での株価算定

素材は、東京高裁平成24(ネ)第2826号損害賠償請求抗告事件(平成25年1月30日判決)です。

( 6 )本裁判についての私見

いわゆる法律系の雑誌等では、会社法の視点から取締役の責任論(とくに高裁判決)についての考察など、とかくアカデミックな分析・検討が目立ちます。しかし、ある意味でそれは当然なことです。 実際に株式価値等の算定にかかわる立場の人間としては、むしろ、各専門家が行った株価算定の方法やそれに対する批判を検討することが、他事案でのより妥当な評価に結びつくと考えられると考えた次第でございます。

( 7 )もうひとつの裁判

アートネイチャー株主代表訴訟は、平成15年11月の自己株式処分と平成16年3月の新株発行についてのものだけではなく、平成18年3月の新株発行についても別の裁判で争われました。 このもうひとつの裁判(東京地裁平成24年(ワ)第36441号(平成26年6月26日判決)および東京高裁平成26年(ネ)第4044号 (平成26年11月26日判決))についても検討してみたいと思います。

( 8 )もうひとつの裁判についての私見

平成18年の新株発行についての裁判(東京地裁平成24年(ワ)第36441号(平成26年6月26日判決)および東京高裁平成26年(ネ)第4044号(平成26年11月26日判決))について私見をまとめました。