個人の事業用不動産の売買にまつわる税務

個人が事業用不動産を売買するときに関係する税務についてまとめました。

( 1 )売主にとってのポイント

不動産所得の基因となる資産を売却した所得は譲渡所得となります。 譲渡所得の収入金額に家屋の対価に係る仮受消費税等を含めるかどうかは、不動産所得の計算上での消費税等の経理処理によります。 譲渡の日の属する年分の消費税の申告が免除されたり(免税事業者)、簡易課税制度による場合にはメリットがあります。一方で、当該年分に多額の消費税等の支出がある場合には、免税事業者や簡易課税制度に該当するとかえってデメリットとなります。

( 2 )買主にとってのポイント

土地の取得に要した額は将来にわたって不動産所得の必要経費となりません。土地の対価に関連する仲介手数料等も同じです 建物の取得に要した額は減価償却によって耐用年数にわたり不動産所得の必要経費になります。

建物の取得に要した消費税等の額をどう回収するかは、当年分の消費税の申告がどのようなものか、不動産所得の計算にあたり消費税等の経理処理をどうするのかによって大きく異なります。 建物の取得に要した消費税等の額を早期に回収するには、当年分の消費税の申告について、免税事業者や簡易課税制度の適用を受けないようにすることが重要です。 消費税の申告が簡易課税制度である場合、みなし仕入率によって算定された額と実際の仮払消費税等の差額によっては、当年分の不動産所得が赤字になることがあります。

( 3 )対価は税込みか税抜きか・・交渉とその後の影響

土地と建物を一括取得した場合の土地と建物の対価の区分については、固定資産税評価額の比率によるべきという採決例や判例が出ています。 しかし、その多くは、売買契約書等に土地の対価と建物の対価の区分の記載がない事案と考えられます。 売買契約書に土地と建物の対価が明記されている場合には、売買契約書に記載された額が土地と建物の取得価額を構成する購入代価になるとの判例があります。 売買交渉中の価格が、土地と建物の固定資産税評価額の合計額と大きく異なる場合にまで、当該評価額の比で按分するという基準に無条件で従わなければならないというのは妥当性を欠くと考えられます。

( 4 )土地建物一括取得の際の区分の検討 Part1

土地と建物を一括取得した場合の土地と建物の対価の区分については、固定資産税評価額の比率によるべきという採決例や判例が出ています。 しかし、その多くは、売買契約書等に土地の対価と建物の対価の区分の記載がない事案と考えられます。 売買契約書に土地と建物の対価が明記されている場合には、売買契約書に記載された額が土地と建物の取得価額を構成する購入代価になるとの判例があります。 売買交渉中の価格が、土地と建物の固定資産税評価額の合計額と大きく異なる場合にまで、当該評価額の比で按分するという基準に無条件で従わなければならないというのは妥当性を欠くと考えられます。

( 5 )土地建物一括取得の際の区分の検討 Part2

買主が法人である事案で、売買契約書に記載されている土地と建物の対価がその客観的な価値と比較して著しく不合理である場合には、合理的な基準によって区分すべきという判例について検討します。 この事案は、当事者間で売買金額や土地と建物の対価の区分について合理的な協議が行われておらず、売買金額も土地の時価相当額よりも低い金額となっています(ただし、売買金額そのものについては課税庁と争いなし)。 判決では、土地と建物の対価の区分の合理的な基準として、固定資産税評価額の比率による按分法によらず、建物の価額を積極的に算定して残額を土地の価額とする直説法を採用しています。