( 4 )扶養控除等(異動)申告書について

転職して入社したり、年末調整で何となく勤務先に提出する扶養控除等(異動)申告書ですが、これは年末調整での配偶者控除や扶養控除を受けるためのものだけではありません。

毎月の給料等から天引き(源泉徴収)される所得税等の額は扶養控除等(異動)申告書の提出の有無で決まるのです。

また、複数の勤務先から給料等の支払を受けている場合、扶養控除等(異動)申告書は1ヵ所にしか提出できません。

扶養控除等(異動)申告書の有無と月々の源泉徴収事務

事業所は、前年の年末調整の際に従業員等から提出された扶養控除等(異動)申告書に記載されている扶養家族の人数に基づいて、毎月の給与支払において源泉徴収を行います。また、当年中に入社した従業員等も入社時に扶養控除等(異動)申告書の提出を受けて、入社後の給与支払における源泉徴収を行います。

ところで、毎月の給与等からの源泉徴収額は、「平成〇年分源泉徴収税額表等」の「月額表」に基づいて行いますが、これには甲欄と乙欄があります(なお、日額表には「丙欄」もあります。)。扶養控除等(異動)申告書がある場合には甲欄の額で源泉徴収を行い、ない場合には乙欄で源泉徴収を行います。乙欄のほうが甲欄よりも源泉徴収額が大きくなります。

ボーッと読んでしまいがちですが、要するに、扶養控除等(異動)申告書の提出がない場合には、乙欄で源泉徴収されることから手取りが減るということです。

事務方的にマズいのは、扶養控除等(異動)申告書の提出がない従業員等なのに、徴収額が少ない甲欄で源泉徴収してしまうことです。

ここで税務調査が入ると、扶養控除等(異動)申告書の提出を受けていないのに源泉徴収額の小さい甲欄で徴収を行っていた、すなわち、毎月10日に納付すべき額がすべて不足していたとして、「源泉徴収もれ」を指摘されることになります。

「年末調整で精算されるからいいじゃないか?」と言えそうですが、扶養控除等(異動)申告書の提出がない従業員等はそもそも年末調整ができません。

扶養控除等(異動)申告書「紛失」は、税務調査で指摘されたらまったくお手上げです。「すぐに見つけなければなりません」

扶養控除等(異動)申告書と年末調整

年末調整の作業にあたっては、年末調整の対象となる従業員等についてその年分の扶養控除等(異動)申告書があるかどうか確認しなければなりません。万が一「紛失」している場合には、従業員等からあらためて提出を受けなければなりません。なお、扶養控除等(異動)申告書が存在しない場合には、そもそもその従業員等の年末調整ができません。

扶養家族の状況は1年の間に増減しうるものですが、本来増減のあったときには従業員等から扶養控除等(異動)申告書の提出を受け、異動後の扶養家族人数で源泉徴収を行うのが原則ですが、年末調整の際に扶養控除等(異動)申告書の提出を受けることで、年末における扶養家族の人数が確定することになります。なお、年末調整の際に提出を受ける扶養控除等(異動)申告書は翌年分です。つまり、平成29年分の年末調整を行う場合には、平成30年分の扶養控除等(異動)申告書の提出を受けます。

しかも、年末調整の際に翌年分の扶養控除等(異動)申告書を受け取っていないと、その従業員等の翌年1月の給与等は乙欄で源泉徴収を行わなければなりません。扶養控除等(異動)申告書の提出の有無は、その従業員等の源泉徴収額に直接影響を及ぼすのです。

間違えやすいのは、たとえば給与収入が2,000万円を超えるため年末調整ができない従業員等について、うっかり翌年分の扶養控除等(異動)申告書の提出を忘れてしまうことです。

なお、年末調整にあたり職場に届け出た扶養控除等異動申告書の内容にその後年末までに異動が生じた場合には、職場に年末調整をあらためてやってもらうか、自分で確定申告することになります。

さて、ここまでは、しょせん経理や総務マターの事務上の問題のように思いがちですが、とくにバイトをしているサラリーパーソンで注意したいことがあります。それは、扶養控除等(異動)申告書は、1ヶ所の勤務先にしか提出できないことです。

つまり、2ヶ所以上の勤務先から給料の支払を受ける場合、扶養控除等(異動)申告書を提出している1ヵ所の勤務先からは甲欄で源泉徴収された金額(小さい額)で、扶養控除等(異動)申告書を提出していない勤務先からは乙欄で源泉徴収された金額(大きい額)で支払いを受けることになります。

そして、年末調整については、扶養控除等(異動)申告書を提出している1ヵ所の勤務先では年末調整をしてもらって源泉徴収票が交付されますが、扶養控除等(異動)申告書を提出していない勤務先からは年末調整をしていない(年調未済)源泉徴収票が交付されます。

そして、確定申告では、すべての勤務先から受け取った源泉徴収票の金額を合計して給与収入額を記載(入力)し、所得税等の額を計算し、これとすべての勤務先で源泉徴収されている金額の合計額との差額によって、納付したり還付を受けることになります。

ところが、それぞれの勤務先で、他では勤務していないと嘘をつき、それぞれに扶養控除等(異動)申告書を提出し、それぞれで年末調整をしてもらった、あるいは、(年末調整ができる状態なのにあえて)年末調整をしてもらわなかったとします。

この場合、確定申告すると、すべての勤務先では甲欄で源泉徴収されているため先ほどの場合よりも源泉徴収された額は小さくなります。このため、勤務先の給与収入を合計して計算した所得税等の額のほうが大きくなるため、(他の要素がない場合には)確定申告では納付ということになる可能性が高くなります。そこで、確定申告をしないようにします。

ところが、それぞれの勤務先は、その従業員等の居住する市区町村に給与支払報告書(源泉徴収票と同じもの)を提出します。市区町村は、それらを合計して住民税を計算します。

市区町村はいずれかの勤務先にその従業員等の給料から住民税を天引きするように通知します。通知を受け取ったいずれかの勤務先は、他からの給与を得ていることを把握し、そこで副業(バイト)がバレることになります。

また、それぞれの勤務先の所得を合計して算定した所得税等の額が、個々の勤務先でのそれぞれの年末調整後の所得税等の額の合計額を超過している場合には、税務署からお尋ねが来ることもあります。

( つづく )