そもそも株式会社とは何なのか

教養とかそういう高尚なことは書籍や別サイトにお任せして、企業のお家騒動のニュースやドラマがより楽しめればと思います。

まずは、そもそも会社とは何なのか、会社と役員と従業員の関係とは何なのかからはじめます。

そもそも会社(法人)とは何なのか

私たち生身のニンゲンは、それぞれ人格をもって主体的に考えそして行動できますし、人としての権利(人権)も憲法によって保障されています。

ところで、会社は「法人」とも言われますが、まさに法律によって作られた人なのです。

「法人」に対して、私たち生身のニンゲンは「自然人」となります。

会社は、株式というものに財産(主としておカネ)を注入することで生まれます。財産を出した人を株主といいます。

ところが、会社のオフィスや会社に所属している人は見えても、リンドバーグのように「翼よ、あれが会社だ!」というふうに見えません。この点で、会社とは法律によって作られたまさにバーチャルな存在といえます。

では、そもそも会社というものはなんで必要なのでしょうか

さまざまな学問からさまざまな切り口があるでしょうが、会社という多くの人からおカネを集めやすい主体を作り、そのおカネを元手にモノを買いヒトを集めて事業を行うほうが、ひとりまたは少人数でやるよりもより大きな事業ができ、世の中に貢献してみんながより幸福になることが期待できます。

この点で、少なくとも株式会社は、営利を追求する主体(営利社団法人)で、もっぱら経済合理性に従って活動するものとされています。

会社と役員と従業員の関係

会社(法人)は法律によって存在し、権利や義務の主体となる能力をもっています。とはいえ、会社は人工知能をもっているわけではなく、みずから意思決定や活動できるわけではありません。

会社の事業活動は、会社に属している自然人が「会社としての活動」を行っているのです。

その会社の事業活動についての意思決定は、株式(より正確には議決権)を持っている人(株主)の話し合い(株主総会)でなされます。

さて、株主から決められたところで会社はみずから活動できません。そこで、会社から委任された・・といっても実質的には株主から委任されて会社の事業活動(経営)にあたる自然人が取締役であり、さらに、対外的に会社を代表し日常業務を決定し執行する人が代表取締役なのです。

ちなみに、株主総会の決議は、株主の数ではなく株式(議決権)の数で決まります。 どんなに人望と能力がある人で、株主10人のうち9人がその人が取締役になることを支持していたとしても、過半数以上の株式(議決権)を持っている1人の株主がダメといったらその人は取締役にはなれません。

そして、代表取締役や取締役の経営方針で会社に雇用された人が、社員、いわゆる従業員です。

まとめますと・・・

会社というバーチャルな存在から経営を「委任」されたのが取締役で、取締役の経営方針により会社に「雇用」されたのが社員(従業員)です。会社との関係でいうと、取締役は「委任」で社員(従業員)は「雇用」です

役員には雇用保険はないのはそのためです。社員(従業員)から取締役(執行役員ではなくて会社法上の取締役)に昇進すると、会社との関係は雇用から委任となり、雇用保険料の天引きはなくなるのです。

ちなみに税金(所得税法)の話では、委任の役員でも雇用の社員でも会社から受け取る職務の対価はひとしく「給与所得」です。

個人と法人の違い

個人と法人の違い・・・となると、たいていはすぐに「法人成りのメリットとは?」になってしまうのですが、そんな税金の話はさておき、もっと根本的なお話です。

「Aさん」と「X株式会社代表取締役Aさん」は、自然人と法人が異なる主体である以上、「別人」なのです

たとえ、X株式会社の株主がAさんだけで、取締役もAさんだけだったとしてもです。

個人事業主のAさんは、感情をもち、ときには経済合理的でない行動もする自然人です。いっぽう、X株式会社は営利社団法人として、ひたすら経済合理性に従って活動することが期待されています。

X株式会社の業務活動はX社の株主に決定され、しかも株主はAさんだけなので、Aさんの意向がそのまま反映されます。しかし、Aさんの意向は、X株式会社の株主としての意向であり、株主の意向に基づいてX株式会社から経営を委任されたのがAさんなのです。そして、先ほど述べたように、代表取締役は、対外的に会社を代表する立場となります。

ですから、「AさんとX株式会社代表取締役Aさん」との契約も一見違和感がありますが、「自然人」と「法人の代表者」で別人なので普通のことなのです。

なお、株式会社は経済合理性に従って営利を追求することが存在理由のため、代表取締役であるAさん個人と「X株式会社」で取引し、その内容がX株式会社がソンして(おカネ等の財産が流出して)Aさんがトクをするような場合には利益相反があることになります。そこで、このような取引には会社の承認が必要なのです(会社法356条3項)。

株主有限責任

株主有限責任というコトバがあります。

会社と株主は別で、会社が買ったり借りた債務について、会社に売ったり貸した債権者から株主に「支払ってくれ」と言われることはありません。

つまり、会社が倒産しても、自分が出資した額がパアになるだけで、会社の債務についてまで責任を負わないというものです。

だとすると、会社が倒産しようが、株主は無関係という気がしないでもありません。しかし、実際はそうならないことが多々あります。

大多数の会社は、大株主が代表取締役でもある「所有と経営の一致」となっています。株主としての立場では株主有限責任であっても、金融機関から融資を受ける場合には代表取締役は連帯保証人になっていることが少なくありません。この場合には、株主としてではなく連帯保証人としての責任を負うことになります。

また、会社が倒産した原因が取締役としての不法行為等にあった場合、(代表)取締役としての責任を負うことになります。

( つづく )