( 5 )売掛債権データベースの利用

ふたつのデータベースについて、得意先別、受注番号別、グループ別などの必要な目的に応じて集計し、情報を結合します。

結合にあたっては、一定の期間の情報のみを集計する方法と、特定の2時点での過去のすべての累計データを抽出・集計して、その差額をもってその期間内のデータとする方法が有効な場合もあります。

会計上の売上高情報を加えるだけでなく、受注番号を共通のキーとして、製造番号等とその情報によって生産活動情報と結びつけたり、買掛債務データベースも作成してこれを結びつけることできます。

両データベースの結合

会計上の売掛金勘定とは、期首残高に期間中の売上高(税込額)が加わり、そこから回収額(税込額)が控除されて残高となります。

少なくとも月次決算において、月中の売上高を請求額によって計上している場合には、請求・回収情報データベースのみでも、 売掛金勘定の明細となります。しかも、得意先別のみならず、受注番号別やグループ別などさまざまな切り口で情報を得ることができます。

この請求・回収情報データベースについて、会計上の売上情報、すなわち、各受注番号について、会計基準上の売上高(財貨の引き渡しや役務の提供や検収など)の情報を加えれば、ほぼ完全な売掛金勘定の明細となります。

しかし、会計データのみからでは絶対に得られない情報があります。

それは、各受注番号において、受注した金額についてどれだけの売上高が計上され、どれだけ請求され、どれだけ回収(資金化)したかというものです。

この情報を得るためには、受注情報データベースと請求・回収情報データベースを結合させることになります。

データベースごとの集計方法

受注情報データベースと、請求・回収情報データベースを結合する作業は、それぞれに「得意先」「受注番号」「グループ」といった共通項があるため、どの情報を必要としているかに応じてダイレクトに抽出集計することもできないわけではありません。

しかし、相当ボリュームが多いことを考えると、それぞれのデータベースごとに必要な情報を集計し、集計した情報を結合するほうが楽なこともあります。

ひとつの方法についてコメントいたします。

並べ替えを行う

「得意先別」「グループ別」「受注番号別」など、それぞれ欲しい情報の目的に応じて、データベースの並べ替えを行います。

まず、並べ替えの前提として、通貨が異なるものは区分しましょう。通貨が異なるもの同士を集計しても無意味です。

ひとつの受注番号に複数のグループが混在する場合や、複数の受注番号からひとつのグループを構成している場合には、あらかじめ複数の行でデータを作っているため、すんなりと並べ替えを行うことができます。

いつでも元の順序に戻せるようにナンバリングをしておくとよいでしょう。

集計する

並べ替えを行ったら、集計を行います。「グループの基準」がまさに集計したい目的の列、「集計方法」は「合計」、「集計するフィールド」は各金額になります。

集計データを取り出す

集計の結果出てきた「小計」行や「合計」行は、数式が入っているためそのままでは使えません。そこで、別のシートに移動します。「ホーム」→「検索と選択」→「条件を指定してジャンプ」→「可視セル」を使うと、小計でまとまったものがそのまま値として別シートにコピー&ペーストすることができます。

「計」を消す

小計行をそのままコピーすると、集計した値の後に「計」が入っています。これを除くには、置換を使います。「検索する文字列」に「(スペース)計」、「置換する文字列」を単純にブランクにすると、簡単に消すことができます。

期間だけを集計するか、累積の差額を取るか

ある期間内の請求や回収情報を得るためには、その期間内のデータのみを抽出し集計すれば足ります。

しかし、たとえば会計上の売上情報も加えていて、とくに、工事進行基準によるグループ別について、グループごとの受注金額(税込額)に対する未請求額や未回収額を見たいということになると、ある期間内のデータだけを抽出するよりも、特定の2時点での累計データを抽出・集計して、その差額をもってその期間内のデータとする方法が有効な場合もあります。

データベースの利用の拡張可能性について

売掛債権データベースとそこから得られる情報はさまざまな目的に利用することができるとともに、さらなる情報を得るきっかけにもなります。

たとえば、受注番号は売上原価(仕入れや製造)にも直結します。

多くの場合、受注番号をキーとして、売上原価(製造や仕入れ)には製造番号等や発注番号が付されます。これによって、会計上の買掛金情報、未払金情報、支払手形情報とも結びつければ、受注から生産(仕入れ)と支払、販売と請求・回収といった企業活動を総合的に把握することができます。

ただし、あまりにも最初から壮大なプランを描いてしまうと、なかなか立ち上げたり軌道に乗せることが困難であると思われます。 データベースそれ自体のフォーマットも月を経るごとにどんどん進化していくものでしょうし、それぞれのノウハウも蓄積されればやり方も変わるはずです。

データベースの作成と、データベースを集計して新たな情報を得てそれを評価することは別物です。 よって、最初のうちは売掛・未収債権は売掛・未収債権で、買掛・未払債務は買掛・未払債務でそれぞれ管理すればよいと思われます。

あまりにもひとつのデータベースでなんでもかんでも管理しようとすると、細かすぎて入力ミスが起こりやすくなり、フォーマットも複雑になって「誰でも作成・検証できる」ということが不可能になってしまい、信頼性やタイムリーな作成を困難にしてしまいます。 経営管理上必要とされる分まで細分すればよいと思われます。

このテの管理的なものには、組織内に非積極的な空気が存在します。まずは、タイトネスは低くてもその有効性をアピールしていくことが大切ではないかと思われます。

( おわり )