( 3 )受注情報データベース

受注情報は、もともと独自のデータベースで管理されていることが多いものですが、これに会計上必要なデータ(会計上あるいは経営管理上のグループ、消費税情報を加えた請求額)を加えていきます。

ひとつの受注番号を1行にする必要はありません。複数の売上計上区分やグループから構成される場合には数行で処理します。

受注情報データベースの構成

受注情報は、すでに販売(請求)ソフト等によりデータベース化されていることも多いです。これを、Excel等に切り出してカスタマイズします。

最低限押さえておかなければならないと思われるデータは次のとおりです。

  • 請求先
  • 受注年月日
  • 受注番号
  • 売上計上区分
  • 会計上のグループ
  • その他経営管理上のグループ
  • 受注金額
  • 通貨単位
  • 円換算額
  • 消費税相当額
  • 税込受注金額(請求合計金額)
  • 先方支払条件

たとえば、数量情報は在庫管理では極めて重要であり、また単価情報も請求金額に影響することから重要ですが、すでに請求金額は計算されており、目的が売掛債権の管理ということになると、単価情報や数量情報は必ずしも必要ではありません。

いっぽう、会計目的や経営管理目的で製品やサービスについて何らかのグルーピングを行っている場合には、これらの情報を追加しなければなりません。通常は、受注番号の情報はデータ化されていますが、プロジェクトや売上の種類は内部的なものなので販売(請求)ソフトのデータベースには通常反映されていないためです。

各項目の解説

受注情報データベースの項目についてコメントいたします。

請求先

受注情報(データベース)では、財貨等の引き渡しは役務の提供先といった情報が入力されれていますが、売掛債権データベースで重要なのは、請求の相手方です。

売上計上区分、会計上その他経営管理上のグループ

会計計上区分とは、たとえば工事進行基準か工事完成基準か、あるいは出荷基準か検収基準かなど、会計上の売上計上基準ごとの区分です。 会計上のグループは、たとえば工事進行基準等の場合には、グルーピングしている工事等の名称を追加します。また、経営管理目的で製品やサービスについて何らかのグルーピングを行っている場合には、これらの情報も追加します。会計上のグループと経営管理上のグループが完全に一致するわけではないからです。 販売(請求)ソフトでも、受注番号の情報はデータ化されていますが、プロジェクトや売上の種類は内部的なものなので販売(請求)ソフトのデータベースには通常反映されていません。これらの情報を追加することになります。 ひとつの受注番号でも、会計上で異なるグルーピングがなされる複数のプロジェクトから構成されるものもあれば、複数の受注番号で、会計上はひとつのプロジェクトとして集計しなければならないものもあります。 このような場合には、データベース上は受注番号単位で1行にすることなく必要に応じて数行に分けます。 Excel上で数行にわたっていても、フィルター機能ですぐに確認できますし、情報に応じて細分化しているからこそ、プロジェクト別の受注金額などで簡単に再集計することができるのです。

受注金額、通貨単位、円換算額

受注金額と通貨単位は非常に重要です。受注情報(データベース)では、一般的に受注した通貨の額で情報が入力されていますが、売掛債権データベースでは、通貨単位とその額だけでなく、その円換算額も追加します。

消費税相当額、税込受注金額(請求合計金額)

売掛債権データベースで重要なのは、消費税情報を盛り込むことです。これにより、受注情報データベースでは、Excelの列の構成として本体価格と消費税額と税込金額を作ることになります。

受注内容によっては、必ずしも消費税を預かる通常の課税取引とは異なる(非課税売上、免税売上または課税対象外)ことがあるからです。

消費税情報を盛り込む最大の目的は、受注金額に消費税額を加えた請求総額を把握することと、請求・回収のデータとの照合のためです。

(請求総額の把握)

また、受注金額を税込ベースで把握する利点として、当該受注番号において請求できる総額をあらかじめ把握しておくことがあります。 と申しますのも、受注番号の受注金額につき、必ずしも全額一時に請求するとはかぎりません。複数回に分割して請求することもありますし、別の受注番号と併せて請求することもあります。ここで、各請求書ごとに消費税相当額を計算すると、そもそも受注番号の受注金額に消費税率を乗じた金額(本来の請求金額総額)とズレが生じてしまうことがあります。 あらかじめ受注番号ごとに(税抜き)の受注金額に消費税率を乗じた(税込み)の請求総額を把握すれば、相手方に分割請求する場合の消費税端数処理を考慮する際に有効です。

(請求・回収のデータとの照合)

会計上の売上高は通常は税抜経理による本体価格が一般的ですが、得意先への請求額や得意先からの回収額は当然消費税込みの税込金額です。 相手方への請求、そしてその回収金額は消費税を加算した税込金額であるため、受注番号の受注金額も消費税を加えた税込金額にしておかないと、受注金額全体(税込ベース)のうち、請求した金額はどのくらいなのか、さらに、回収した金額はどのくらいなのかがよくわからなくなってしまいます。 たとえば、受注番号ごとにどの程度未請求額(未回収額)があるのかどうかの資料を作成するのに、そのつど消費税相当額を乗じたりしていては計算の正確性や安定性に欠けることになります。 この消費税相当額については、本体価格に消費税率を乗じることになりますが、端数処理に注意すべきです。Excel上は円未満の端数は通常のセル表示ではまったくわかりません。これが、全体的な合計金額を集計すると数円のズレが生じたりするのです。

先方支払条件

先方支払条件は基本的には不要なのですが、もし入金額の消込み等の場合に、これはどの部分の入金なのか特定できないことがあります。このような場合に備えて、先方支払条件をあらかじめ抽出しておけば、正規の受注情報(データベース)にアクセスしてチェックする手間が省けます。「受注金額の10%を受注時、30%検収時に50%」といったメモ程度でも十分です。

( つづく )