( 4 )簿記はスポーツです

貸借対照表や損益計算書を構成する各勘定科目にも「左側(借方)」と「右側(貸方)」があります。 問題文を見て、仕訳を直感的にイメージし、下書き用紙のT勘定に書き込み、電卓をたたいて解答用紙に記入する・・・簿記はまさにスポーツです。

各勘定科目にもすべて左側と右側がある

貸借対照表と損益計算書というマクロ的なコメントをさせていただいたところで、次はミクロ的なコメントをさせていただきます。

さて、仕訳を紙に書きまくって飽き飽きして退屈極まりなくなっている段階で、いよいよ実践的なところに入ります。

貸借対照表も、損益計算書も、それぞれ勘定科目から構成されています。資産に該当するものは「左側」、負債に該当するものは「右側」、純資産に該当するものは「右側」、費用に該当するものは「左側」、収益に該当するものは「右側」です。

そして、仕訳によって「左側」や「右側」に金額が入ることによって、各科目の金額(残高)は増減することになります。資産の勘定科目ならもともと「左側」の科目なので、仕訳が「左側」に入れば残高は増加し「右側」に入れば残高は減少します。資産の勘定科目ならもともと「左側」の科目なので、仕訳が「左側」に入れば残高は増加し「右側」に入れば残高は減少します。

設例と仕訳とT勘定

よく、簿記の教科書などで「T勘定(Tフォーム)」というのが使われます。これはアルファベットの「T」を各勘定の元帳に見立て、仕訳に応じて「左側」や「右側」に記入していくというものです。

具体的な設例と作業内容をご説明します。

  • 「掛けで8,000円仕入れた」場合には、「(左側)仕入高(右側)買掛金」ですが、まずは仕入高のT勘定と買掛金のT勘定を下書き用紙に書き込み、そして仕入高のTの左側に金額8,000円を記入し、買掛金のTの右側に金額8,000円を記入します。その理由は、仕訳では仕入高が左側に来ているから仕入高のTの左側に書き、仕訳では買掛金が右側に来ているから買掛金のTの右側に書くのです。テキスト等では日付と相手勘定が書いてあるために初学者の方はつい難しく考えてしまいますが、元の仕訳でその科目が左なのか右なのかで、その科目のTの左に書くのか右に書くのかが決まるのです
  • 「掛けで10,000円売上げた」場合には、「(左側)売掛金(右側)売上高」ですが、まずは新たに売掛金のT勘定と売上高のT勘定を下書き用紙に書き込み、売掛金のTの左側に金額10,000円を記入し、売上高のTの右側に金額10,000円を記入します。その理由は、仕訳では売掛金が左側に来ているから売掛金のTの左側に書き、仕訳では売上高が右側に来ているから売上高のTの右側に書くのです。テキスト等では日付と相手勘定が書いてあるために初学者の方はつい難しく考えてしまいますが、元の仕訳でその科目が左なのか右なのかで、その科目のTの左に書くのか右に書くのかが決まるのです。
  • 「売掛金が預金に5,000円入金した」場合には、「(左側)預金(右側)売掛金」ですが、まずは新たに預金のT勘定を下書き用紙に書き込み、預金のTの左側に金額5,000円を記入し、売掛金のTの右側に金額5,000円を記入します。その理由は、仕訳では預金が左側に来ているから預金のTの左側に書き、仕訳では売掛金が右側に来ているから売掛金のTの右側に書くのです。テキスト等では日付と相手勘定が書いてあるために初学者の方はつい難しく考えてしまいますが、元の仕訳でその科目が左なのか右なのかで、その科目のTの左に書くのか右に書くのかが決まるのです。
  • 「買掛金を4,000円支払った」場合には、「(左側)買掛金(右側)預金」ですが、まずは買掛金のTの左側に金額4,000円を記入し、預金のTの右側に金額4,000円を記入します。その理由は、仕訳では買掛金が左側に来ているから買掛金のTの左側に書き、仕訳では預金が右側に来ているから預金のTの右側に書くのです。テキスト等では日付と相手勘定が書いてあるために初学者の方はつい難しく考えてしまいますが、元の仕訳でその科目が左なのか右なのかで、その科目のTの左に書くのか右に書くのかが決まるのです。

仕訳問題の解答や解説とは違うので混乱するかもしれませんが、正直、日本語を見て仕訳をウーンと考えているようではまだまだ雑巾がけが足りないと思います。何にも考えずほぼ無意識のうちにできなければいけません。

ロジカルに考えるところは他にたくさんあります。複雑な仕訳ならともかく単純な仕訳でアタマを使ってはいけません。

T勘定の内容

では、下書き用紙に記入したT勘定の内容はどうなっているのでしょうか。

  • 損益計算書の費用であり「左側」である仕入高は「左側」に8,000円が加わり増加します。
  • 損益計算書の収益であり「右側」である売上高は「右側」に10,000円が入り増加します。
  • 貸借対照表の資産であり「左側」である預金は、「左側」に5,000円が入り増加し「右側」に4,000円が入り減少するため、差し引き1,000円の増加ということになります。
  • 貸借対照表の資産であり「左側」である売掛金は、「左側」に10,000円が入り増加し「右側」に5,000円が入り減少するため、差し引き5,000円の増加ということになります。
  • 貸借対照表の負債であり「右側」である買掛金は、「右側」に8,000円が入り増加し「左側」に4,000円が入り減少するため、差し引き4,000円の増加ということになります。

けっきょく、簿記の試験とは、問題文に書いてある日本語を仕訳に直しつつ、下書き用紙にどんどんT勘定を作って左に右に金額を書き込み、電卓で叩いて解答用紙に解答を書き込む作業なのです。

そして、このT勘定というのが、簿記3級などで出てくる「ナントカ帳に転記しなさい」のまさにそのまんまなのです。

これを粛々とこなすためには、やはり下積み、すなわち、仕訳を嫌なほど何度も紙に書いている経験があるから、いきなりT勘定を書き込んで左に右に書き込むことができるのです。

やはり、簿記は仕訳が基本ですし、簿記はスポーツなのです。

その後の勉強のヒント

ステップアップを目指そうとすると、おそらく次の壁が特殊商品売買でしょう。ただ、これに限らず、苦手なトピックについては、同じトピックの問題にたくさん当たることが大切だと思います。たくさんの問題に当たれば、さまざまなパターンからいろいろな角度で設問に触れることができ、もやもやしていたことについて理解が深まるからです

また、簿記3級や簿記2級のテキストのほうがわかりずらく、簿記1級や会計士試験や税理士試験の問題集とその解説のほうがわかりやすいということがままあります。簿記3級や簿記2級は、ある程度簡単な説明にしなければならないため、かえって全体像がつかみにくく理解しずらいという面があります。

さきほど申し上げたことと矛盾しますが、たくさん問題を解くこととあわせて、過去に解いた問題を何度も解くことが大切です。いったん解いた問題ですから、答えはわかってます。しかし、「問題文の数字を見る」「下書き用紙に書く」「電卓をたたく」「解答用紙に記入する」・・・どれもケアレスミスがあります。一度解いたことがあるからといって、その後も常にパーフェクトとは限りません。

まったく同じ問題は試験には出ませんが、簿記に関していえば、数字とかが変わっているだけで似たような問題は繰り返し出題されます。たくさん問題を解くのは必要ですが、過去に解いた問題のケアもキチンとしないと、同じところでただジャンプを繰り返しているだけで、時間の経過ごとに実力の階段を着実に上っているとはいえないと思います。

解いた問題を再び解くというモチベーションをつけるため、完璧に解けるのは当たり前、いかに早い時間で完答できるか自らにプレッシャーをかけましょう。プレッシャーは本番に備えるとともに、ケアレスミスを防ぐためでもあります。制限時間60分なら15分くらいで終わるようになればよいと思います。

早く解け、しかも、今まで解いた問題が完璧ならば、初見の問題も自信をもって臨むことができるのです。

( おわり )