( 2 )仕訳から貸借対照表と損益計算書は作られます

簿記の勉強で考える場合、貸借対照表については、左側(借方)が資産、右側(貸方)が負債と純資産として、損益計算書については、左側(借方)が費用、右側(貸方)が収益として覚えましょう。そして、仕訳によってどういう動きになるのかを考えましょう。

貸借対照表を理解します

貸借対照表というのは「バランスシート」とも言われます。何と何がバランスしているかといいますと、「左側」の資産の合計額と、「右側」の負債及び純資産の合計額が一致(バランス)しているのです。

資産 100 負債 80
純資産 20

すでにお気づきのこととは存じますが、仕訳もバランスしているのです。初学者が目にする仕訳は左側(借方)と右側(貸方)が1行ずつですが、だんだん複雑な仕訳になりますと、左側(借方)が3行、右側(貸方)が5行といった仕訳もめずらしくありません。でも、左側(借方)の各行の合計金額と右側(貸方)の各行の合計金額とは一致(バランス)しているのです。こういった複数行ずつの仕訳では、このバランスを逆利用して、左側(借方)と右側(貸方)の差額で特定の行の金額を出せるのです(仕訳問題でよく問われます)。

「左側」が資産、「右側」が負債と純資産です。実は、この意味はとっても深いです。

資産は左側

資産の各勘定科目は、もともとが左側なので、仕訳で左側(借方)に入ると増加し、右側(貸方)に入ると減少します。

たとえば、「売掛金を回収した」「貸付金を回収した」「建物を購入した」というとき、それぞれ次の仕訳となります。

(借) 預金 XXX (貸) 売掛金 XXX
(借) 預金 XXX (貸) 貸付金 XXX
(借) 建物 XXX (貸) 預金 XXX

売掛金、貸付金、建物はすべて資産で左側の科目です。さらに、回収したり購入したりして増減するのは預金でやはり資産で左側の科目です。

つまり、売掛金を回収すると、(もともと左側の)預金は左側なので「増加」し、(もともと左側の)売掛金は右側なので「減少」します。貸付金を回収すると、(もともと左側の)預金は左側なので「増加」し、(もともと左側の)貸付金は右側なので「減少」します。建物を購入すると、(もともと左側の)建物は左側なので「増加」し、(もともと左側の)預金は右側なので「減少」します。

これらの仕訳は、すべて資産の中での、つまり、貸借対照表の左側での増減なのです。

負債は右側

負債の各勘定科目は、もともとが右側なので、仕訳で左側(借方)に入ると減少し、右側(貸方)に入ると増加します。

たとえば、「おカネを借り入れた」「買掛金を支払った」というときは、次の仕訳になります。

(借) 預金 XXX (貸) 借入金 XXX
(借) 買掛金 XXX (貸) 預金 XXX

借入金、買掛金はともに負債で右側の科目です。いっぽう、借り入れや支払いにより増減するのは預金で資産で左側の科目です。

つまり、おカネを借り入れると、(もともと左側の)預金は左側なので「増加」し、(もともと右側の)借入金は右側なのでやはり「増加」します。買掛金を支払うと、(もともと右側の)買掛金は左側なので「減少」し、(もともと左側の)預金は右側なので「減少」します。

これらの仕訳は、資産の預金と負債の買掛金・借入金で、資産と負債がともに増加したり減少します。

損益計算書を理解します

次は、損益計算書を理解します。

貸借対照表というのは「バランスシート」とも言われます。何と何がバランスしているかといいますと、「左側」の資産の合計額と、「右側」の負債及び純資産の合計額が一致(バランス)しているのです。

資産 100 負債 80
純資産 20

しかし、損益計算書も実はバランスしているのです。何と何がバランスしているかといいますと、「左側」の費用の合計額と、「右側」の収益の合計額をバランスさせるのがその期間の利益か損失なのです。

たとえば、「左側」の費用の合計額が90、「右側」の収益の合計額が100の場合、利益は10であると直感的にわかります。そして、「左側」と「右側」をバランスさせるため「左側」に10を入れればよいことになります。

費用 90 収益 100
利益 10

たとえば、「左側」の費用の合計額が300、「右側」の収益の合計額が100の場合、損失は200であると直感的にわかります。そして、「左側」と「右側」をバランスさせるため「右側」に200を入れればよいことになります。

費用 300 収益 100
損失 200

これを、「売上が貸方だから利益も貸方じゃないか?」「費用が借方だから損失も借方じゃないか?」とか考えてしまうとおかしくなってしまうのです。「左側」「右側」です。

費用は左側

費用の各勘定科目は、もともとが左側なので、仕訳で左側(借方)に入ると増加し、右側(貸方)に入ると減少します。

損益計算書の科目の仕訳は、貸借対照表の科目がからむことが多いので、貸借対照表の「左側」が資産、「右側」が負債と純資産であることもおさらいします。

たとえば、「消耗品を預金で購入した」「掛けで仕入れた」は次のように仕訳します。

(借) 消耗品費 XXX (貸) 預金 XXX
(借) 仕入 XXX (貸) 買掛金 XXX

消耗品費、仕入高はいずれも費用で左側の科目です。預金は貸借対照表の資産で左側の科目で、買掛金は貸借対照表の負債で右側の科目です。

つまり、消耗品を預金で購入すると、(もともと左側の)消耗品費は左側なので「増加」し、(もともと左側の)預金は右側なので「減少」します。掛けで仕入れると、(もともと左側の)仕入高は左側なので「増加」し、(もともと右側の)買掛金は右側なので「増加」します。

収益は右側

収益の各勘定科目は、もともとが右側なので、仕訳で左側(借方)に入ると減少し、右側(貸方)に入ると増加します。

たとえば、「掛けで売り上げた」「受取利息が預金に入金した」は次の仕訳となります。

(借) 売掛金 XXX (貸) 売上 XXX
(借) 預金 XXX (貸) 受取利息 XXX

受取利息、売上高は収益なので右側の科目です。預金は貸借対照表の資産で左側の科目で、売掛金も同様に貸借対照表の資産で左側の科目です。

つまり、受取利息が預金に入金すると、(もともと左側の)預金は左側なので「増加」し、(もともと右側の)受取利息は右側なのでやはり「増加」します。掛けで売り上げると、(もともと左側の)売掛金は左側なので「増加」し、(もともと右側の)売上高は右側なので「増加」します。

( つづく )