受取利息から源泉徴収された所得税等の勘定科目

普通預金に入金された利息には、すでに所得税と復興特別所得税が源泉徴収されています。源泉徴収されるのは利息の15.315%です。

そこで、実務上は、入金した預金利息の額を0.84685(=1-0.15315)で割って源泉徴収前の受取利息の額をいったん算出して、端数調整などをして正確な源泉徴収前の預金利息の額を確定します。

これらの税額は、損益計算書上、法人税、住民税及び事業税(法人税等)として表示されますが、期中の会計処理はどうすべきでしょうか。

私の場合、期中は法人税等a/cではなく未払法人税等a/cのマイナスとして処理し、決算時にこの所得税等の額も考慮された法人税等の申告納付額を法人税等a/cで計上することで、最終的には法人税等として表示されるようにしています。

利息の支払いを受ける際に徴収される税金

普通預金に入金された利息は、所得税と復興特別所得税が源泉徴収されています(所得税については所得税法181条、復興特別所得税についてはいわゆる復興財源確保法28条)。

源泉徴収される額は、利息は15%(所得税法182条1号)です。 復興特別所得税の徴収は所得税の額の0.21%(いわゆる復興財源確保法28条2項)、よって、所得税15%の場合は0.315%となります。

会計上の表示

損益計算書において、法人税、住民税及び事業税(利益に関連する金額を課税標準として課されるもの)と法人税等調整額は、税引前当期純利益の次に表示します(会社計算規則93条1項、財務諸表等規則95条の5第1項)。

いっぽう、利息や配当等の支払いを受ける際に源泉徴収される所得税等については、原則としてその事業年度の所得に対する法人税の額から控除(税額控除)されます(法人税法68条1項)。

このことから、損益計算書上、利息や配当等に係る源泉徴収される所得税等のうち、法人税から税額控除の対象となるものは「法人税、住民税及び事業税」(以下「法人税等」といいます。)に含めて表示し、税額控除の対象とならないものは営業外費用として表示することになります。営業外費用として表示する理由は、受取利息が営業外収益として表示することとのバランスによるものと考えられます。

なお、貸借対照表において、未払法人税等とは、法人税、住民税(都道府県民税及び市町村民税をいう。以下同じ。)及び事業税の未払額をいいます(財務諸表等規則49条3項、会社計算規則75条2項1号ル)。

税務上の取扱い

損金算入の可否

法人税の額、地方法人税の額、住民税(道府県民税及び市町村民税)は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません(法人税法38条1項、2号)。

利息や配当等の支払いを受ける際に源泉徴収される所得税等については、原則としてその事業年度の所得に対する法人税の額から控除(税額控除)されます(法人税法68条1項)。そして、法人税から控除される所得税も損金の額に算入されません(法人税法40条、68条)。なお、平成27年12月31日までに支払いを受けた利息には所得税に加えて住民税利子割も特別徴収されていましたが、この利子割も損金の額に算入されません(法人税法38条2項2号)。

法人税の申告

法人税の申告にあたっては、源泉徴収された所得税の額と復興特別所得税の額は、法人税申告書別表六(一)「所得税額の控除に関する明細書」、法人税申告書別表五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」に記載します。

仕訳の計上と源泉徴収された所得税等の勘定科目

普通預金に入金された利息は、所得税と復興特別所得税が源泉徴収されています。

つまり、所得税が15%、復興特別所得税が0.315%の合計15.315%が源泉徴収された残額が入金しています。

そこで、仕訳計上にあたっては、税引後の受取利息の金額を税引前の金額にします。

具体的には、入金した預金利息の額を0.84685(=1-0.15315)で割って源泉徴収前の受取利息の額をいったん算出して、端数調整などをして正確な源泉徴収前の預金利息の額を確定します。

ここで問題となるのは、この源泉徴収された所得税等の額について、使用する勘定科目は何かということです。

そもそも、この源泉徴収された所得税等はどうなるかというと、その事業年度の法人税の申告で算定した法人税の額から控除され、また、法人税の額から控除しきれない額は、還付されます。

いっぽう、最終的な損益計算書上の表示では、受取利息で源泉徴収される所得税等のうち、法人税から税額控除の対象となるものは「法人税等」に含めて表示します。このことからすると、勘定科目としては法人税等a/cを使うことが妥当とも思われます。

(借) 預金 XX (貸) 受取利息 XXX
法人税等 X

しかし、私は、(損益計算書の科目である)法人税等a/cではなく、(貸借対照表の科目である)未払法人税等a/cのマイナス(借方)処理で行います。

(借) 預金 XX (貸) 受取利息 XXX
未払法人税等 X

未払法人税等a/cのマイナスを使う理由

損益計算書の法人税等の計上と、これに伴う法人税申告書上の処理についてはいろいろな方法があります。

私の場合は、次の金額を一致させるようにしています。

  • 損益計算書の「法人税、住民税及び事業税の額」の額
  • 法人税申告書別表四「所得の金額の計算関する明細書」の「損金経理した納税充当金(5欄)」
  • 同別表五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」の「損金経理した納税充当金(32欄)」

このためには、法人税ソフトで法人税その他の申告納税額(これはまさに貸借対照表の負債の部の「未払法人税等」の額となります。)を計算し、別表五(二)の「期末納税充当金」の額がその申告納税額(未払法人税等)と一致するように、仕訳1本で法人税等の額を計上します。

(借) 法人税等 XXX (貸) 未払法人税等 XXX

このためには、最終的に損益計算書で「法人税等」として表示すべきものは、法人税等a/cではなく未払法人税等a/cのマイナス(借方)で処理します。

(借) 預金 XX (貸) 受取利息 XXX
未払法人税等 X

これにより、源泉徴収された所得税等の額について、期中の処理では法人税等a/cとして処理されなくとも、この額は当期の法人税額の計算で考慮され、その結果としての法人税の申告納税額が法人税等a/cとして計上されるため、最終的には、会計上で要求される表示と一致することになります。

法人税申告上も、もともと所得税の額は損金の額に算入されません(法人税法38条)が、納税充当金の繰入額(会計上は法人税等の計上)も損金の額に算入されません。

詳細な説明につきましては、「最終利益のシミュレーション(法人税額の計算と未払法人税額の正確な計上) 」をご覧ください。

(参考)過去の受取利息の源泉徴収とその会計処理や税務処理の変遷

平成24年12月31日までに支払いを受けた受取利息

普通預金に入金された利息は、所得税と住民税利子割が源泉徴収されていました。 源泉徴収される額は、所得税が15%、住民税利子割は5%です。

つまり、15%+5%=20%が源泉徴収された残額が入金しているため、実務上は、入金した預金利息の額を0.8(=1-0.2)で割って源泉徴収前の受取利息の額をいったん算出して、端数調整などをして正確な源泉徴収前の預金利息の額を確定していました。

そして、税務申告にあたっては、源泉徴収された所得税の額は法人税申告書別表六(一)「所得税額の控除に関する明細書」(平成23年4月1日開始事業年度以降、それ以前は「所得税額及びみなし配当金額の一部の控除に関する明細書」)に、住民税利子割の額は、道府県民税(都民税)の申告書の旧第六号様式別表四の四「利子割額の控除・還付・充当に関する明細書」及び旧第九号の二様式「利子割額の都道府県別明細書」に記載するために、勘定科目に補助科目を付して計上していました。

税務申告の関連で、会計ソフト上も、源泉徴収された所得税の額と住民税利子割の額についてそれぞれ補助科目を付して集計していたものと思われます。

平成25年1月1日から平成27年12月31日までに支払いを受けた受取利息

東日本大震災に伴ういわゆる復興財源確保法により、復興特別所得税が創設され、平成25年1月1日以降受け取る利息は、復興特別所得税が追加的に源泉徴収されています。 源泉徴収される額は、所得税が15%、復興特別所得税が所得税の額の0.21%(よって、所得税15%の場合は0.315%となります。)、住民税利子割は5%でした。

つまり、15.315%+5%=20.315%が源泉徴収された残額が入金しているため、実務上は、入金した預金利息の額を0.79685(=1-0.20315)で割って源泉徴収前の受取利息の額をいったん算出して、端数調整などをして正確な源泉徴収前の預金利息の額を確定していました。

そして、税務申告にあたっては、源泉徴収された所得税の額は法人税申告書別表六(一)「所得税額の控除に関する明細書」に、復興特別所得税の額は復興特別法人税申告書別表二「復興特別所得税の控除に関する明細書」に、住民税利子割の額は、道府県民税(都民税)の申告書の第九号の二「利子割額の控除・還付・充当に関する明細書」及び第九号の三様式「利子割額の都道府県別明細書」に記載しました。

税務申告の関連で、会計ソフト上も、源泉徴収された所得税の額、復興特別所得税の額及び住民税利子割の額についてそれぞれ補助科目を付して集計していたものと思われます。

その後、平成26年4月1日以降に開始する事業年度からは、法人税申告書別表六(一)「所得税額の控除に関する明細書」には、所得税額と復興特別所得税額との合計額を記載することになりました。このため、所得税額と復興特別所得税額をあえて区分する必要はなくなりました。

(おわり)